生きもの異変


 ニッポン列島の北から南まで、生きものがらみの異変が、春先からずっと続いている。

 北海道では、スズメが謎の大量死が話題になり、すわ、鳥インフルエンザか、と騒ぎになりかけたが、どうやらそれはシロ。局地的な寒気の影響では、と言われているのだが原因不明。一方、海では油まみれの海鳥がたくさん漂着、これまた環境汚染から生態系の異変か、と問題になると共に、ハングルつきの廃油ドラム缶も発見され始めている。海では客船がクジラとぶつかったとおぼしい事故が頻発、鹿児島では高速船が何十人ものケガ人を出した。さらに、都内の公園で今度はハトが大量死しているのが判明。こちらは毒物による悪質なイタズラかも、と言われていて、今度は東名高速に鹿が乱入で大渋滞、北海道などでは珍しくもないできごとでも不慣れな内地じゃ事件になるわけで、いやもう、とにかく次から次へと……

 われらニッポン人は、身のまわりの生きものに結構敏感な民族らしく、昔話や民話の登場キャラとしてタヌキやキツネが定番なのも、人の棲む里にまでちらほら顔を出す生きものだったからだし、スズメにしても近世の都市生活の進展によって身近な存在になっていったことは、柳田国男が指摘している。同じ生きものでもハエや蚊、ゴキブリやカエルの類はいなくなってもさして気にもとめないどころか、殺虫剤その他で積極的に駆除するのだが、ことけものや鳥となると話はまた別。あとから考えたらあれが天変地異の始まりだった、などと言うと下手なSFもどきになりかねないが、それでも何か気になることも確か。人の領分と生きものの領分、その新たな線引きとルールが必要になってきているのだろうが、さて、その手だては? 少なくとも「話し合い」で解決するようなものじゃないことだけは確かのようだが。