mixiとニッポンのネット文化

 現在、2006年12月5日火曜日、21時42分。2ちゃんねるニュース速報板の「ケツ毛バーガー」スレは、まだ生き残っている。

 “祭り”の端緒からふた月経過したいまも淡々と継続。今回のこの通称「ケツ毛バーガー」騒動のメインスレッドと言っていいが、これまで実に322スレッドを消化。ひとつのスレッドの書き込み上限が1000レスだから、×322で単純計算のべ320000以上のレスがついたことになる。

 アクセスしているひとりあたりの平均書き込み回数などは推測するしかないが、仮にひとりあたり平均30回程度の書き込みをしていたとして、関わった人数は10000人以上。ほぼ張りつきっ放しで“住人”と化した者から、単なる通りすがりの者まで濃淡はあれど、低く見積もってもざっと10000人から20000人、まあ、素直に考えてそれ以上、まずは数万という数の人間がこのふた月の間にこのスレッドに関わっていただろうことは想像に難くない。

 その他、2ちゃんねる内部での関連スレッドもいくつか継続中。さらに、各種のブログや掲示板などを含めれば、その裾野の広さはあなどれない。もちろん、どこも一時期の盛り上がりはすでにないけれども、この手の騒動は日常茶飯事、同時にあっという間に忘れてしまうのがお約束のネット界隈でも最近では大きなものになったこの“祭り”の余韻は、今も地味にくすぶっている。通称「ケツ毛バーガー」騒動、表のメディア的には「三洋電機社員個人情報流出事件」などと呼ばざるを得ないようだが、その程度にネット住民たちに衝撃を与えた事件、ではあったらしい。

 

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 まずは、改めて騒動の概略を。

 ネットで騒ぎになり始めたのは10月の始め。その後約一週間足らずで、初めてこれが“報道”の舞台に乗った10月6日付けのZAKZAKの記事が、まずはわかりやすい。

アイドル級の美人彼女「お宝写真」が大流出!?

ファイル共有ソフトミクシィ

経営再建中の三洋電機大阪府守口市)の社員がファイル共有ソフトで内部資料や社員名簿を流出させたことが6日、分かった。それだけならまだしも、清純派アイドル級美貌を持つ恋人が「開マン」している写真も混じっていたため、さあ大変。ソーシャルネットワークサービス「mixi(ミクシィ)」の個人サイトが割り出され、恋人のプライバシーをさらけ出す大問題に発展している。

ファイルを流出させたのは同社の技術系部門に勤務する20代の男性社員。内部の「技術レポート」のほか、所属する部署や同社男子バレー部の名簿など多数の資料を流出させた。三洋電機によると、顧客の個人情報や取引先の情報の流出は現段階で確認されていないという。ファイル共有ソフト「Share(シェア)」の暴露ウイルスが社員の自宅にあるパソコンに感染、今月2日ごろに流出したとみられる。

「通常、この程度の情報流出ではあまり話題にならない。しかし、超カワイイ彼女の裸体が『秘密』フォルダに含まれていた。そのうち2枚は完全な“ご開帳”だったので、ネット上は大騒ぎとなった」(ITライター)

ちなみに“開帳”写真は三洋電機製のデジカメで撮影されていた。さらにお宝写真は流出したメールにも添付されており、中には“尺八”ショットもあったというから社員は相当、好きモノだったようだ。

そして「『MIXI用』と題されたファイルがあり、社員がミクシィに参加していることが判明した」(同)。個人の日記や掲示板を仲間内で共有できるミクシィは、友人の紹介がないと参加できないシステムから安心感があるのか、実名でそのまま登録するユーザーも多い。

一般的に珍しい名字にもかかわらず、実名で登録していた社員はすぐにネット上の匿名掲示板に群れる“個人情報ハンター”にミクシィのページを割り出された。また、ミクシィには彼女とみられる女性が作成したページも存在。社員が日記へのコメントなどを通して交遊があったことから、簡単に割り出されてしまった。

「運の悪いことに彼女らしき女性も実名で登録していた。日記には四国で『警察署の少年補導員をしている』と書き込みがあったことから、『補導員が大股開きか!』と、騒ぎは収拾が付かない状態に陥っている」(同)というから、次々にプライバシーを暴かれた女性にとってはたまったものではない。

横浜市大医学部の学生が今月3日、「アタック25」の予選でカンニングしたのが発覚したのも、ミクシィの実名登録が原因。500万人のユーザーを抱え、東証マザーズにも上場するなど、順風満帆なミクシィだが、度重なる“事件”で、暗雲が垂れ込めてきた。

 ZAKZAKは、(株)産経デジタルの運営するスポーツ・芸能系ニュース・ポータルサイト。まあ、サンケイスポーツのweb版、みたいなものと思っていただければ、そう間違いはないだろう。以前から、ネット界隈での動静などにも敏感に反応するので、ネット住民たちからはそれなりに注目されていたのだが、しかしこの記事は掲載後、じきに削除されてしまった。同じく、産経系列のニュースサイト iza! にも転載されていたのだが、こちらも同じく前後して削除。三洋電機からクレームがついた、いや、徳島県警からかも、などとささやかれたが、実際にそれら関係方面からの問い合わせはあったものの削除に至ったのはそれが直接の理由ではなく、「むしろ一般の読者からの抗議の電話やメイルが多くて、なるほど、一般の個人を特定できるような内容ではあったので、こちらで自主規制した形です」(産経の関係者)ということらしい。三洋電機徳島県警も問い合わせはしてきたものの、その時点ではまだ事態を正確に把握できていず、どう対応したらいいのかわからなかった、というのが本当のところらしい。

 「読者から」ということは、ZAKZAKもiza!もネットのサイトだからネットユーザーということになる。後で触れるように、流出した開脚画像をあちこちにさらに貼って煽ってまわったのがネットユーザーなら、それと全く同様に、もしかしたらモティベーションとしてはそれ以上の「正義感」で、騒動の当初からそれらのサイトに抗議していたのも彼ら同じネットユーザーだった。このことはもう一度確認しておいた方がいい。いずれにせよ、正規のメディアの「報道」のステージに乗った瞬間から、この騒動はネットを介したそれら「世間」の視線にさらされる宿命にあった。良くも悪くも。

消されたZAKZAKのキャッシュ http://megalodon.jp/?url=http://www.zakzak.co.jp/top/2006_10/t2006100630.html&date=20061007084635

消されたIZAのキャッシュ http://megalodon.jp/?url=http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/22213/&date=20061007190747

 

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 要するに、三洋電機に勤める若い衆のパソコンから、社内情報はもとより、彼がプライベートにつきあっていたとおぼしい若い女性のあられもない全裸開脚画像が流出、しかもその彼女の名前その他、個人情報までが mixi を介してネット住民たちの間に大々的に知られることになった、という次第である。

 ちなみに、「ケツ毛バーガー」という通称は、その全裸画像の中にあった臀部丸出しの画像から。ハンバーガーのバンズに見立てた臀部から陰部の毛がはみ出ているさまからの連想だが、このミもフタもないネーミングのインパクトも相乗効果。もとは石原さとみ遠藤久美子など、眉毛が濃いめで体毛の繁茂してそうなのアイドルに奉られたものだったのだが、ここで奇しくも一気に市民権を得た形になった。

 しかし、単なる裸体画像ならばネットのこと、いまやそこら中に転がっている。性器丸出しは言わずもがな、ロリでもペドでもグロでもホモでもレズでも獣姦でも、およそニンゲンの欲望のバリエーションに見合ったありとあらゆるパターンの「エロ画像」にネット住民たちは耐性がある。単なる性器丸出し画像、というだけでここまで反応するはずもない。

 また、winny に代表されるいわゆるファイル交換ソフトを介して、何らかのウィルスに感染した個人のパソコンの中のファイルが本人のあずかり知らぬ間にだだ漏れになってしまう事態というのも、ネットの世界ではすでにある種の風物詩、とりたてて珍しいことではない。大げさに言えば毎日どこかで、どこかの知らない誰かの、それらプライバシーに関わる情報はデジタル空間にばらまかれ続けている。こちらについても住民たちにはすでにある程度、耐性がある。

 ならばなぜ、今回の「ケツ毛バーガー」騒動が、ここまでネット住民の興味を引くものになったのか。

 ポイントは、おそらくそれが「いま、そこにある危機」に見えたこと、だろう。つまり、パソコンを使いネットにアクセスしている者なら誰にでも平等に訪れ得る、そんなありふれた様相の危機に思えたこと、それがいたく住民たちのココロを刺激した。

 そして、その重要な媒介になったのが他でもない、mixi である。騒動発覚後ふた月たってなお、スレッドが存続しているのも、その mixi がからんでいたから、という面はひとつ、否めない。そう、今回の「ケツ毛バーガー」騒動は mixi がからんでいたことで、ことは単なる不用意な個人のファイル流出というにとどまらず、どこかで対 mixi の聖戦、といった趣きをはらむことになっていった。ある時期から2ちゃんねる内部の関連スレッドのかなりの部分が mixi 批判、の趣きになり、一部は mixi をつぶせ、といったいささか過激な空気に染まっていったのは、おそらく偶然ではない。

 敢えて大文字のもの言いを弄するならば、それはこれまでそれなりに形成されてきていた、2ちゃんねるに代表されるニッポンのネット文化といったものに依拠した自意識にとって、ここにきて新たに姿を現してきた mixi に代表されるSNS(ソーシャルネットワーキングサーヴィス)の類が新たにネット環境に吸引し始めたような層が共有する“気分”に対する違和感をくっきりと意識する潮目のようなものになった、と言えるだろう。それは後になってみれば、ブロードバンド環境の急速な整備に伴い、インターネットに関わりweb空間に流入してくる新規参入人口がみるみる増えていっていた、そんな自我拡張期ならではのできごと、といった風に位置づけられるようなものかも知れない。


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 問題のファイルが流出し始めたのは、少なくとも10月2日21時以前、と言われている。

 大阪三洋電機勤務の社員Sのパソコンに収められていたファイルが、winny 同様のファイル交換ソフト Share を介して流出。ファイルの内容は、社員名簿や業務関係のものと共に、何よりも女性の開脚画像が含まれていた、というのが発端だった。

【事件の経過】※( )内、流出開始からの経過時間(21時として)

(00h)ファイル流出開始:10月2日21時以前

      ↑

 ★このあたりで対処してたら特定もされなかった?★

      ↓

(16h)mixi内で特定される:10月3日13時~14時

(23h)DL板に高校コミュ晒される:10月3日 20:28:25

      ↑

      ↑

 ★この時点だと特定されても被害は少なかったかも?★

      ↓

      ↓

(43h)mixi凸第1号?:10月4日16:01直後 ←亞問とかが暴れたのがこのへん↓

(45h)2chで晒されている旨高校コミュにカキコ(DL板URL付):10月4日 18:46

(47h)ニュー速にスレが立つ:10月4日20時

(50h)まゆこログイン&削除開始:10月4日 23:32頃 ←★実に流出50時間後★

※まゆこが知ったのは流出後実に50時間後、

※その頃には 白鯛はとっくに退会してていなかったとか・・・

 流出開始後二日ほどで、mixi に「突撃」が始まっている。それ以前に mixi 内部のコミュニティで話題になっていたようだが、それら mixi に注目させるきっかけになった書き込みは、現在までに言われているところでは、ダウンロード板での某スレッドのこのあたり。

375 名前: [名無し]さん(bin+cue).rar 2006/10/03(火) 06:28:34 ID:oIEWJoYG0

>>349

mixi用のフォルダあるからmixiにいるんだろうな。

376 名前: [名無し]さん(bin+cue).rar 2006/10/03(火) 06:56:29 ID:oIEWJoYG0

おもった。この人をmixiで見つけたら祭りになるとおもわないか?

 とは言え、2ちゃんねるユーザーと mixi ユーザーは当然、ある部分で重複しているはずだ。

 実名登録を推奨し、会員による紹介でしか新たに参加できないことがウリの mixi と、もともとアングラの匿名掲示板として始まり、そのままネット環境の激変期をかいくぐりながら巨大化してきた2ちゃんねるとではある意味で水と油、本質的に相容れない部分はある。しかし、ユーザーにとってはどちらも同じネット上でのサーヴィス。それぞれの嗜好によって重心のかけ具合はさまざまにあり得ても、厳格に二者択一といったものでもない。それはその他のサーヴィス、たとえばブログなどにしても同様だろう。2ちゃんねるに出入りしながら mixi も会員になる、個人でブログも開設している、あるいはまた、ネットオークションには出品するし、エロサイトだってのぞきに行く――そのようなネットとのつきあい方の複線化はちょっと考えれば何も不思議ではない。それをあたかもセクトの対立のようにとらえる習い性は、一見わかりやすい分、ともすれば眼前で起こっていることについての判断を誤るきっかけにもなりやすい。

 だから、ネット住民、といったもの言いにしても、それはある個人の属性を特定するものというよりも、むしろネットに関わる際の個人の自意識の多面性のうちのある側面をそれぞれ強調するような、そんな意味あいでとらえるのがおそらく、最も穏当なのだと思う。

【流出データから判明したこと】

・S鯛M久 の本名・住所・実家の住所・電話番号・勤務先・生年月日。

・S鯛M久が「M岡」とメール登録している者から 画像(お好み焼き)添付されたメールが届き、そこに写っていた女性が他のデジカメ画(鳴教卒業式も)の女性と似ていた。

【ネット検索から判明したこと】

・2004年と2006年に「M岡」という人物が市大・鳴教大で論文を発表している(論文検索)。

mixi情報から判明したこと】

mixi内で「M岡」と登録している人物が市大や三国のコミュに参加していて、補導員をしていると日記に書いていた(学歴も登録していたらしい?)。

mixi内で「M岡」と登録している人物の生年月日・血液型。

【推測による部分が大きいが多分そうだろうということ】

・2003年頃に携帯で裸を撮影された女性は、多分デジカメ画の女性と同じだろうということ。

(F画に関しても本人かどうかの結論は出ていないし、ましてや顔の写っていないものは・・・)

【推測ではあるがこのスレでは多数の賛同が得られていること】

・顔が赤いのは興奮してというより酒に酔ったため。

 (酒に弱い旨を本人が日記で書いていたし、飲み会時の写真と同じような顔をしている)

・開帳時の性器は興奮状態ではない(興奮時と思われる性器画像(写メ画)と比較)。

・流出物以外のハメ画が存在する可能性は低い。(基本的に画像の欠番があまりない)

  (開帳画はレオマ&津田のフォルダに入っていたものを秘密に移動させたもの)


【ガセだろうと結論付けられていること】

・M岡自殺説(サイバッチが掲載 → 翌日誤報を認める)

・三国に弟在校説(三国スレでは否定・「M岡・M国丘」で検索してたまたまヒットしたっぽい)

・12月に結婚を予定していた説(ソース元が怪しいということでガセ判定)

・女性の父親が大学教授説(自称父親が2chに降臨してそういっていたらしいという程度)

・鯛が別の女性と婚約していた説(ソースなし・しかも矛盾点多し)

【根も葉もない(?)2ch情報(否定も肯定もできないものorされていないもの)】

・自称知り合いによる大学時代のM岡情報(誰かが書いてたものをあちこちにコピペしたもの)

・自称知り合いによる大学時代のS鯛情報(誰かが書いてたものをあちこちにコピペしたもの)

・M岡の実家が地主説 ・コアマガジン社が動き出した ・S鯛M岡、新居購入説

・S鯛M岡既に別れていた説 ・M岡香川に新カレがいた説 ・S鯛退職説 とか 鳥取に出向説

【流出物には含まれていたらしいが、ロダにあがらなかったもの】

・S鯛の和泉市にある実家の住所が記載されたメール

・公務員(大阪らしい)試験の受験資料

-“お好み焼き”メール

 (事件発端のメールであるがなぜか10月24日(祭り発生から20日後)に初めてZIPであげられる)


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 このできごとがネット住民の最大公約数の意識にとって「いま、そこにある危機」として認識され、これほどまでの広がりを見せた理由を、少し考えてみよう。

 確かに、できごとそのものは、確かに誰にでも起こり得ること、として不安を募らせるに十分なものだった。逆に言えば、つきあっている彼女の全裸開脚画像ほどでなくても、おいそれと人前にさらしては具合の悪いような画像、動画、ファイルその他は自分のパソコンのHDDに秘めている。その程度に今やパソコンは、「プライバシー」の聖域のような存在になりつつある。たとえば、自分が不慮の事故などで突然死んだ後、パソコンはどう始末されるのだろう、という不安は、昨今のパソコンユーザーならば誰しも抱いているだろうし、ましてやそれがデジタル化されたデータである限り「未来永劫web上を漂い続ける」といった不安(それが事実かどうかはともかく)もまた、常につきまとう。それらと同様の背景で、今回のこの事件もある種、等身大をうっかりと超えてゆけるポテンシャルをはらんだ“おはなし”として、半ば都市伝説的な様相を呈してしまったところがないではない。

 mixi に対して抱かれていた潜在的な違和感が、それと複合する。

 実名登録を売りにして、それまでネットに対して敷居の高かった層、とりわけ女性や若年層などをあっさり取り込んで急速に大きくなった mixi は、その他SNSの代表選手として見られていた。例によってアメリカ渡来、新たなネット上のサーヴィスがやってきた、といった類の煽り文句は、すでにIT系メディアを介して流されていたし、一般紙なども考えなしに追随していた。彼らネットの〈いま・ここ〉に対する公式の解釈者たちにとって、2ちゃんねるに代表されるネット文化のある中核の部分はダークサイドとして扱う前提がすでに共有されていたし、ネットがらみの犯罪沙汰では「某巨大掲示板」と称される2ちゃんねるの存在が意識される文法で語られるのがデフォルトになっていた。確かに存在しているのだけれども、自分たちの立場からはうまく言葉にしきれない、というジレンマが、彼ら表のメディアの自意識にそれらダークサイドを相対化できる「正義の味方」を待望する方程式が無意識に埋め込まれてゆく。そこに mixi はうまくはまりこみつつあった。

 匿名と実名、常連と新参者、悪意と善意、といった、一見わかりやすい対立の構図が、2ちゃんねると mixi 、という図式に重ね合わされてゆく。それは表のメディアの側と同様に、ネットユーザーの最大公約数もまた共有している構造だった。2ちゃんねる(に代表されるネット文化の現在=ダークサイド)vs mixi (に代表されるSNSなど新たな動き=正義の味方)、という図式は、そのように公認されていった。

 友だちを増やそう、という、まるで「友だち百人できるかな?」並みのスローガンにうっかりうなずいていまうナイーヴさと、でも、自分のプライバシーをむやみにさらすのはこわい、という感覚とが同居している現状に、 mixiの戦略はうまくはまった。実名で、しかも会員からの紹介制、ということで「安全性」がおのずと強調され、それに対して匿名はあぶない、というイメージもまた比例して強められてゆく。さらに九月に株式上場を果たし、ライブドア村上ファンドショック以降の新興市場の新たな牽引役としての期待をかけられたこともあって、メディアはそれまで以上に好意的に扱い始めていた矢先、というタイミングも作用した。これからはSNSの時代、という煽り文句は、考えなしのジャーゴン、としてネットであれ表のメディアであれ、共有されるようになりつつあった。


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 一方で、 mixi は単なる出会い系サイトに過ぎないのでは? という素朴な疑問も、すでにある程度わだかまっていた。

 実名丸出しで mixi に参加してゆくまわりの友人たちを眺めながら、ほんとに大丈夫かよ、と思う、あるいは、試しに mixi に登録してみると会社の同僚たちの中にもたくさん mixi に実名登録している者がいてびっくりした、とか、個人情報保護がこれほど叫ばれている状況でなお、おのれの属性やプライバシーをさらけ出すことに無防備な人たちが大量に存在することに対する驚きや嘆声は、今回の騒動の間でも一貫して見られた。

招待制、マイミクというのがねずみ講そっくり。

足跡がついて、ログイン時間まで晒すという間抜けさ。

「何だよこれ、うぜーな」というのが普通の感覚。

ねらーの方がマトモだよ。


つーか、さすがに実名登録推奨はまずかったろ。

あと繰り返し安全だと主張していたことも。

この辺はブラクラ何度も踏まされた百戦錬磨のねらー達の方が先見の明があったな。


いや実名登録を推奨していた責任より、実名登録を推奨しながら何のプライバシーを守る対策もしてなかった責任だろう。プライバシー対策ができないもんだから、実名登録推奨文の削除した。

これじゃあ株下がって当たり前。ハンゲもクソだけど、ハンゲの方が対策はマシだと思う。


「安心して居心地の良い」って表現が2ちゃんねらーの闘争心に火を点けちゃったな。

一部のマスコミは2ちゃんと対象的な存在のように煽ってたし・・・

結果、2ちゃんねらーの大半がID取得してしまいミクシィも2ちゃんも変わらなくなってしまったw


アメリカのマイスペースを見ろよ。

10代の女の子が性犯罪に巻き込まれ、次々と殺され、未解決の事件もある。もう社会問題になっているのだ。

SNSが犯罪の温床になるのは当然のこと。運営者と利用者はそれを認識しないと。

mixiの場合、本名をプロフィールに書くことを勧めており、住所・学歴・職業などを書き込んでいるものが多く、悪意ある者からするとかっこうの餌食だろう。


ミクシィの仕組みに、悪意の人対策を入れてなかったんだろうな。

まあ、悪意の人はBANすりゃいい、って考えたんだろうけど、こんなに大量に押し寄せるとは、思わなかったんだな。

 多岐にわたる関連スレッドからの書き込みを摘出したものだが、「名無しさん」たちのやりとりの中で、2ちゃんねると mixi の「場」としての質の違い、をかなり的確にとらえている認識が宿り始めているのが、見てとれると思う。もっと簡潔に、というならば、こんなコメントも。

「善意」に煽られやすいミクシィユーザー。

http://d.hatena.ne.jp/plummet/20061002/p2

例えばここで「チェーン・テクスト」の問題点が指摘されているけども、これが自然発生でなくミクシィニュースなどで公式に情報を求めるなどすればどうなんだろうか? ミクシィが、でなくてなんらか検証能力を持った団体が。

なによりミクシィでの動きは容易に現実での動きに直結しそうだ。つまりは善意で人を集めて現実に動員できる。これをサヨクが利用しない手はないように思う。すなわちサヨクにとっての理想的な場は2ちゃんでもブログでもなくミクシィなのではないかという。

反市民な2ちゃんねらー

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://news.80.kg/index.php?%BB%E0%A4%CC%BB%E0%A4%CC%BA%BE%B5%BD

最近だとこれだけど、別にこの例を出すまでもなく「2ちゃんねらー」と言った時、そこには反市民的意味が含まれていると思う。同時にオーマイニュースなどを見れば明らかだけど、市民的な立ち位置の人は反2ちゃんねる(ねらー)でもある。

もしミクシィが今後反2ちゃんねるという立場を取るとしたら「敵の敵は味方」ということで・・・

結論

サヨクに乗っ取られたミクシが2ちゃんねるを滅ぼす、ということになるのではないかなと。

http://d.hatena.ne.jp/santaro_y/20061011/p1

 「サヨク」「市民的」といった語彙の内実を斟酌しておかねばならないにせよ、ここで言いたいことは、ある種の「善意」が結果的に吸引され、集約されてしまうような構造が、おそらく mixi には内包されている、ということだろう。

 それは、わかりやすく言えば、学校的な民主主義のタテマエに過剰同調してしまうような意識、であり、その意味でタテマエとしての「民主的」で「リベラル」なもの言いや身振りになじんでしまうようなものであり、その延長としてうっかりとマルチ商法に足踏み込んでしまうようなものでもあったりするらしい。ネット住民たちにとっては以前から、たとえばyahoo!掲示板に集うようなタテマエとよく似た感覚を、 mixi に集約される意識に対して感じていたはずだ。タテマエとホンネ、といった言い方でその双方の違いはこれまで語られてきていたけれども、この場の文脈に即して敷衍するならばそれは、ネットが伸長してきた情報環境におけるニッポン的なポリティカル・コレクトネスのありようをめぐる二重性、とでも言うようなことだと思う。

 

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 ただ、同時にそれは、先にも触れたように、どちらに依拠するのか、といった平面的な二者択一としてだけ考えていてはおそらくことの半分以下の理解しか得られない。その二重性は、ひとりの人間の内面の複数の側面、考えるのが穏当だろう。たとえば、こんな具合に。

おれのmixiにおける書き込み

ハンセン病の人たちが経験してきた苦痛って、想像を絶するものだったと思うんですよね」

おれの2chにおける書き込み

「ライ病患者、きめえええええ」

 まさにこの後者の側面、「ホンネ」と称されがちな部分が強調されて現われるために、メディアの「良識」は2ちゃんねると、そこに代表される意識を一枚岩の如く想定して、時に悪の巣窟のように語り、煽ってきた。その煽ってきた分、対抗的に「善良」なネットのサーヴィスが夢想されやすくなり、そのような前提にあてはまりそうな案件があれば一気に語り方はそちらに傾く。

 三洋電機社員が mixi に登録していたこと、そしてその画像の主の女の子もまた実名で参加していたこと、が、事態をより大きくし、このような増幅の構造を一層作動させることに寄与した。と同時に、当の社員は異様なほど大量のメイルのやりとりをしていた形跡があり、携帯電話付属のカメラで撮ったとおぼしき彼女の画像を、彼女以外の知り合いにさらして自慢していたフシがある、とも言われている。何かマルチ商法に関わっていたのでは、という説も出ていたのだが、可能性としては確かに十分あり得る話だろう。mixi そのものにマルチ商法とよく似た「善意」を集約してゆく「誘惑」の構造があり、そこに無防備で流入してゆく個人の意識のありようとして、少なくともこれまでタテマエとして当たり前だと思っていたような「個人」の意識や「プライバシー」の制御についての感覚などとはまた別の、言わば「底抜け」感が宿ることは、80年代から随時、指摘されてきている。あるいは、かつてのリクルートから後の渋谷ビットバレー界隈などを経由して、最近のIT系企業の現場にまでなお、揺曳しているらしい、ある種の疑似ギョーカイ「ノリ」、とか

祭りの発端から眺めてきた者なんだが、最初は数多くの流出と大差ない平凡な流出だったんだよな。

情報もバラバラに存在していたし、それぞれの情報も大した事なかった。エロといえば秘密フォルダの数枚しかなかったし。

ただその複数に散らばった情報が、短時間のうちに、

①流出メール→男の本名・勤務先把握、受信メールの内容から交際相手の女を推定

ミクシィフォルダ→ミクシィにて名前検索→両者の年齢判明

③女の参加コミュ→出身高校・大学が判明

④女の日記→現在の職業判明

⑤女のマイミク→高校時代の友人らが判明

⑥並行して2chニュー速板にスレ立て依頼

⑦女の出身高校コミュに流出の事実と該当2chスレを告知

⑧女の日記に書き込み

⑨無修正ケツ毛画像の乱立うp

⑩亞門のモータードライヴ(関連コミュに無修正ケツ毛画像の猛烈うp)

⑪流出画像を用いたフラッシュの作成

⑫本名・経歴・流出画像・フラッシュの関連スレへのマルチポスト

こんな感じで1日足らずで広まってしまったのには

正直凄さを通り越して恐ろしさを感じた。

特に⑥~⑨が同時並行で行われていたのは本当に恐ろしかった。

 会員制、ということは、裏返せば会員「以外」との線引きを明確にすることで、自分(たち)の特権性を擬似的にせよ際立たせることになる。コミュニティ、というのは、ことの本質としてそういうことだ。「内輪」の保証。それによる内圧の制御。だが、それが微妙にピッチが狂うと、「内輪」のディテールがまるで「ちびくろサンボ」のトラのように溶解して、気色の悪いカルト的空間にもなってゆく。ネット住民たちが「馴れ合い」と称する状態は、おそらくそれに近い。まして、実名推奨、である。それら「馴れ合い」のメカニズムがさらに尖鋭化するのも容易に想像できる。

 ネット黎明期の頃から、いや、それ以前のパソコン通信時代から、本質的にこのような「内輪」がウェブ上でどのように成り立ち得るのか、そしてそれは実社会でのクラブやコミュニティにおける経験とどのように連続性があるのかないのか、といった問題は、それぞれの経験の蓄積の中で解決の道が探られてきた。ブログがニッポンに輸入されても、やはりそれまでの掲示板と個人日記の複合形、という以上のものになりにくいのも、それらニッポンにおける「内輪」構築の来歴と、その上に重なるネット文化のありようがからんでいる部分が大きい。 mixi に代表されるSNSにしても、それらの文脈で穏当に位置づけられるべきもの、であったはずだ。

 だが、「安心」神話が肥大した分、不用意なままそれら「内輪」の「馴れ合い」に吸い込まれてゆく意識が組織されてゆくことになった。 mixi に対する違和感というのはその程度に、ネット文化という水準にとどまらず、〈いま・ここ〉のニッポンに蓄積されているコミュニティ形成のスキルとその達成の質について改めて問う、そんなモメントになっていったところがある。

 もちろん、言わずもがなのことだが、mixi とうまくつきあっている者もあたりまえにいる。むしろ、現実にはそちらの方が多数派だろう、とも思う。限られた「内輪」の相互連絡ツールとして、時には自営業の手軽なマーケティングツールとして、 mixi に限らずSNSの利用法というのはあり得ると思う。当たり前だ。だが、今回の「ケツ毛バーガー」騒動を通じて、奇しくもあぶり出されることになった mixi が、そしてSNSが今のニッポンの情報環境においてはらみ得る「あぶなさ」については、現状流通しているジャーゴンとはまた別に、もっと穏当でつぶさな言葉の水準でなお、語り、考えておかねばならないものだと、改めて思う。

■■■■■■■■■■■■(株)mixiの問題点■■■■■■■■■■■■

1.退会・削除アカウントも含めての会員数発表。粉飾報告では?

2.都合悪いアカウントの強制削除。

   ①削除条件が不明。削除理由は明記すべき。

   ②一般ユーザーの巻き込み問題。

   ③情報操作では?

3.無責任な実名登録推奨とリスク管理

4.犯罪を推奨・肯定するような発言・コミュニティの黙認。

5.運営陣によるメッセージの検閲

 利用規約上、アカウント削除の要件が明記されているが、実際の削除は、恣意的で削除要件である犯罪報告の日記・日記における個人中傷等については放置し、一方で、メッセージは全て検閲している。

【疑惑】

1.一部の利用者によって、SNSが実質出会いサイトと化している。

2.業者の勧誘があっても運営サイドは放置。

3.個人情報の転売(メールアドレスはガチ)。

4.登録抹消者の個人情報を所持し続けることの違法性。

【株】

上場企業として健全なサイト運営を主たる事業に謳いながら、実情は大きく異なるものと思われる。

しかし、これらの事実関係については、○○社は、株主に対して隠匿している。

このような事実関係が何らかの報道によって明らかになれば、株主の損害は計り知れない。

【総評】

"mixi本位"の運営が目に付く。

社会的責任を果たすべき上場企業としてどうなのか。