武家の商法、役人の無責任

北海道旭川市旭山動物園が、年間入場者数206万人を達成。上野動物園に次いで全国二位。とは言え、首都圏に比べて背景人口は段違いに少ない上、冬場は積雪と難儀な条件を抱えながらの数字だから、実質日本一と言ってもいいかも知れない。
動物園に限らず、水族館、博物館に美術館といった、これまでお役所が経営してきた文化施設が、軒並み赤字で経営不振に陥っている。この旭山動物園もご他聞にもれず赤字経営のお荷物だったのが、これまでの常識を捨てて動態展示に特化したところ評判に。さらに、弱点の冬場もペンギンの野外散歩が人気を呼んで目玉商品になった次第。わがニッポン人は世界に冠たるペンギン好き民族なんだそうで、なるほど、言われてみればCMその他にもペンギンは多用されているが、それらを差し引いても旭山動物園のペンギンパレードは、ツボにはまっている。
かつて、武家の商法、ということが言われた。明治維新で失業した武士たちがにわかに商売を始めたものの、うまくゆかずに多くはじきに廃業。それと同じで、これまでお役所仕事でやってきたものをいきなり民間基準、競争原理で商売しろと言っても無理な話。指定管理者制度とやらで経営主体を公募する例もあるが、多くは態のいい丸投げで結局責任はとらないまま。何がいけなかったのか、についての誠実な反省なくして、「民間」を言い訳の無責任、敵前逃亡がまかり通るのは本末転倒。かつての敗戦時の軍部のような、あとは野となれ、式の無責任は、しょせん役人は、の絶望だけが民心に残ると心得られよ。