地方競馬改革・取材メモ

岐阜県の状況について

 笠松競馬存廃検討委員会の最終答申が、先月末に出ました。本文は、「いまのままでは赤字を回復する見込みがないので、廃止を勧告する」というものでしたが、そこに付記がついていて、競馬法改正に従い民間参入の可能性が出てきている現在、具体的な提案があれば関係諸団体(主催者その他)は、その提案をよく検討した上で結論を出すように、という内容でした。

 この最終答申の後、ライブドアからの具体的な提案が出たわけですが、それに応じる新たな検討委員会が、構成員五人で組まれることになっています。ライブドアからの具体的な提案について、この委員会で新たに検討する予定で、構成員には、笠松競馬組合の奥村局長以下、競馬組合を構成する岐阜県笠松町岐南町からの代表と、現場の関係者の代表などが入る模様です。

 農水省競馬監督課の意向としては、地方競馬再編の動きは既定事実としても、さすがに笠松競馬まで廃止になることには躊躇があるようで、存続の方向にいくつか手助けをする構えを見せています。

 具体的には、地方競馬全国協会経由で提示している「東海地方ブロック化構想」で、これは大枠として、名古屋競馬の弥富トレーニングセンターに笠松の厩舎を集約、主催者もブロック化による経営改善計画を出して開催経費の大幅削減を行い、笠松と名古屋(現在の)の二競馬場で競馬の開催を継続する、というものです。場合によっては、これに金沢競馬(石川県)、園田競馬兵庫県)も相乗りさせることも含めて、水面下で動いています。

 この「東海地方ブロック化構想」に民間参入=ライブドアがどのように関わるのか、については、農水省でも、また愛知県議会筋と岐阜県笠松の主催者などとそれぞれ思惑と温度差があって、まだ全貌はよく見えてきていませんが、少なくとも笠松競馬の存続に向けて、ある方向性は出されつつある現状と見ていいと思います。

 岐阜県の梶原知事は来年二月で「引退」を表明していて、次期の知事には外務省OBが事実上指名されているような状況なので、今月開催中の県議会で梶原知事が、笠松競馬の去就についてどのような答弁をするのかが注目されていますが、群馬県の小寺知事や高知県の橋本知事(強力な高知競馬存続論者 先日再選)、岩手県の増田知事などと情報交換して情勢を見極めようとしているのは、周知の事実です。


●●農水省、JRAその他、競馬関係団体の動向について

 農水省は、改正競馬法に積極的に関与せざるを得なくなっているのは、今年に入ってからの既定事実です。背後には、参院競馬議連があり、そのトップは自民党青木幹雄氏です。

 これまでは、地方競馬に対して具体的な支援は全くしない、という姿勢だったわけで、だからこれまで群馬県以下の地方競馬主催者の自治体が、中央競馬の場外馬券売り上げのコミッションを1%からもう少しあげてほしい、と何度も要望してもなしのつぶてだったわけです。それがここにきて、JRAの総合企画室などを経由して、このコミッションも5%程度にまであげていい、というオファーが岩手県その他複数の地方競馬主催者に届いています。群馬県などの場合、これが3%になっただけで既存の単年度赤字は解消されるわけで、JRAサイドからの地方競馬存続に向けての側面援護と解釈していいと思われます。

 地方競馬がなくなると、JRAの在籍馬の流通先(二次流通以降)がなくなり、同時にまた、北海道その他の競走馬生産者にとっても売れる先がなくなるわけで、どこまで存続させればいいのか、農政レベルもからんだ政策的判断が国に求められています。「地方競馬は十個所程度に」といったアドバルーン一時期、競馬関連マスコミであげられていたのも、そのあたりの政策的情報リークです。

 JRAとしても、売り上げが三兆円どころか二兆円前半にまで容易に落ち込んでいる現在、地方競馬のネットワークでの場外馬券発売を手放すのは得策ではない。地方競馬がつぶれると場外馬券売り場もつぶれるに等しいわけで、競馬をなくしてもせめて場外だけでも、という無理な要求をしてきているのもそのためです。先のコミッション見直しについてもその関連での動きと考えていいでしょう。

 地方競馬全国協会は、数日前、この夏に農水省から出向してきたばかりの筆頭理事が、大井で2000円の馬券を買ったという咎で依願退職になりました。この背景には、組織内部の内紛と共に、地全協自体が特殊法人改革でつぶされそうになっていることなどがからんでいます。ライブドアとの折衝で、地方競馬のインターネットでの馬券販売(D-NET)をやっている日本レーシングサービス(NRS)をライブドアが出資して立て直したい、というオファーを出したのに対しても、現場の職員が好感を示したのに幹部理事が揃って色好い返事をしなかったことで、民間参入については自らの権益保護をたてまえにして後ろ向きな態度ととられています。

 先の「東海ブロック化」にしても、この9月に群馬県と栃木県に提示しようとして門前払いを食った「北関東ブロック化」プランの転用です。また、NRS主導で全国の地方競馬の場間場外発売ネットワークを整備する計画も示されていますが、このための資金源が事実上準備できないことで、各地方競馬主催者の間では実現性に疑問を示す向きがほとんどです。

 ライブドアは来週にも高知競馬と業務提携の正式契約を発表する見込みです。内容は、群馬県などに提示した提案内容にあるような、公益法人を組んだ上で番組などの内容にまで大きく踏み込んだものになると見られています。岐阜県も先に述べたような状況で、前向きに検討をする態勢をとりつつあります。少なくとも、提案が実現可能なものかどうか、開かれた議論の場に出そうとしています。