バカとハサミは使いよう、とはよく言った。お笑い芸人でも、政治や社会批評っぽいことわめき続けていれば、それなりにテレビや雑誌、メディアのお座敷ってやつはまわってくるらしい。いや、それどころか、文化庁のありがたいお墨つきまで転がり込んできたり。商売のやり方としては確かにあり、ではある。
太田光のことだ。お笑いコンビ、爆笑問題の背の高い方。テレビその他でこのところ、ずっと何やら小難しい能書きを口角唾を飛ばして力説、中身は信じられないほど薄っぺらな学校民主主義で、「反戦平和」「護憲」「弱者擁護」「環境保護」などの日替わり定食。なにせ「太田総理」なんてキャラにもなってるから手がつけられない。
憲法について、中沢新一と対談本を出したりもしている。オウム事件の「思想犯」としての総括も棚上げしたままの希代の無責任男、中沢と敢えて組ませた編集者がいたとしたら、これまた希代の性悪か真性のバカ。これは坂本龍一か村上龍あたりでも同様で、いずれそういうお手軽な発想こそ、正しく反動。「武士道もこんな手合いに鼓吹され」というのは、明治末期、折りからの桃中軒雲右衛門人気に沸く浪曲ブームに対する落首だったというが、そのひそみにならえば、「(平和)憲法もこんな手合いに擁護され」だろう。
お笑いだから偉そうに言うな、というのではない。ひとまず大健闘中のそのまんま東こと、東国原宮崎県知事の例もある。お笑いだろうが何だろうが、バカがバカのまま、バカに甘えて何か偉そうことを言おうとする、そのさまが見るに堪えない、それだけのことだ。
とは言え、おそろしいことに最近、もしかしたらこの太田のみっともない立ち居振る舞い自体が、役立たずな文化人や評論家のパロディ、ものすごく深遠な文明批評なのかも、と思うようにもなってきた。もしそうだとしたら太田よ、すまぬ、正直にあやまるぞ。