「武豊包囲網」の背景

武豊の成績がパッとしない。今年に入ってまだ55勝、JRAリーディング4位。重賞勝ちが八つ。普通の騎手なら立派な成績だろうが、これが武豊となるとやはりもの足りない。体調不良などもささやかれているが、いったい何が起こっているのか。

武豊包囲網ができてるんですよ」と声をひそめるのは、関西のある関係者。JRAの騎手は騎乗依頼をさばいてゆくために、窓口となるエージェントを置いていることが珍しくない。それは多くの場合、専門紙のトラックマンやスポーツ紙の記者だったりするのだが、そのエージェントの一部に「アンチ武豊」ラインが作られているというのだ。

もとはと言えば、武豊サイドがその専門誌の記事にクレームをつけて取材拒否をしたことが発端とか。何ともくだらない話だが、そんな包囲網の中でなお、これだけの成績を残しているとしたらやっぱりすごい。ただ、ことはそれだけではすまないようだ。

「実は最近、専門紙業界に“そのスジ”の影響がどんどん強くなってて、このユタカ包囲網にはそのへんのからみもあるんですよ。たとえば、京都馬主会でこの春、内紛があって裁判沙汰にまでなってますが、これも“そのスジ”の馬主同士のいさかいが発端。東京馬主会もグダグダです。まあ、そういう関係は競馬につきものですが、今回は互いに全国組織をバックにした、言わば“G?級オープン”現役同士のケンカだからシャレにならない」(ある厩舎関係者)

エージェントの背後にも“そのスジ”が見え隠れするとなれば、聞き捨てならない。騎乗馬をさばきながら予想もする兼業行為自体、公正確保上いかがなものか、という意見もあり、近々「征伐」が行われる、というウワサも。

「JRAや農水省? いや、彼らは労務対策や競馬利権のコントロールに利用してきてるんで手が出せない。もっと上、政治家マターです。六月に競馬法改正が国会を通ってますが、その重要な柱が「民営化」と共に“そのスジ”の排除。裏稼業が馬主会の幹部や専門紙の株主じゃせっかくの「民営化」も骨抜きなわけで、眼にあまる、というのでガツンとやられるんじゃないですか」(ある政治部記者)