名古屋競馬再生へ向けて

 まず、名古屋に限らず、今の地方競馬、ひいてはその地方を底辺とするニッポン競馬全体の構造改革が緊急課題だということ、そのためにこの六月初めに改正競馬法(第二次)が通ったこと、それが今、ニッポン競馬を語る時、最前提となる認識です。

 その「改革」とは、「戦後」パラダイムの中の競馬、つまり「官」による「お役所競馬」「財政競馬」の弊害と限界を認め、民営化による新たな競馬事業のありかたを模索する、そのための改革です。

 これは、ほとんどまともに報道されていません。それは日本の競馬ジャーナリズムがほぼ予想ジャーナリズムであり、記者クラブ制度より愚劣なJRA丸抱えに安住しているからです。農水省以下、競馬エスタブリッシュメントの「官」は、それこそ今発覚している社会保険庁並みの怠惰をむさぼってきた結果、今の地方競馬の危機的状況があるということです。

 控除率25%という世界一高い「テラ銭」をふんだくりながら、赤字を垂れ流し、しかも全くその責任を問われない、というのは、まさに道路公団や郵政、社保庁などと共通の「戦後」の問題です。そういう「戦後」パラダイムの中で収益事業として競馬(競輪、競艇なども基本的に同様)をやり、公正確保をしながら世界的にも異例な高額の賞金水準での通年開催というJRAシステムを作り上げてきた、それは世界からも高い評価を受けていますが、しかしそのシステムを二重構造(共に競馬法下でありながら、その下位制度としては中央/地方のダブルスタンダード)で支えてきたありかた自体がもう、今世紀に入って以降、はっきり破綻を示し始めている。いま、この段階で抜本的な構造改革を制度的にやらないことには、地方に限らずニッポン競馬そのものに未来はありません。

 以上のような大状況を踏まえた上で、ご質問にできるだけ答えることにします。

 総論として、いま、地方競馬にできることは……

1.まず、主催者自身が県や市といった行政の枠組みを自ら超えて、周辺の主催者との連携に全力を尽くすこと、これしかありません。連携をして主催者の組織をスリムにし、もちろん競走馬から厩舎関係者まで含めて、馬を開催するための資源を共有し、経費を抜本的に削減する。

2.その場合、厩舎関係者や馬主会をつんぼ桟敷に置いたままの従来のやり方でなく、共にテーブルについて望ましい予算編成や中期計画、経営プランなどを検討すること。「みんなで競馬を盛り上げる」体制をつくることです。

3.そして、馬場管理や場内警備、馬運車業者など関連周辺事業に堆積している「癒着」の悪弊も、できる限り表沙汰にして膿を出す。そのような無駄を削減することだけで、たいていの競馬場の単年度赤字は大きく減ることは、この四月からの「民営化」下のばんえい競馬を見ても明らかです。

4.同時に、連携した主催者同士の共通する管内での、ミニ場外展開を即座にやる。これも「民営化」可能にすでになっているので、ショッピングモールやパチンコパーラー、場合によっては郵便局や農協なども含めて、ATM数台規模からのミニ場外を全面的にやってゆく。「馬券を売る」システムの効率化、集約化という意味でこれは不可欠です。その際も、これまでの場外関連利権(富士通、NRS、その他業者など)のぼったくり体質を明らかにして透明化、健全化してゆくのは言うまでもありません。

5.いわゆる「ネット馬券」のさらなる充実も当然、なされるべきです。現状、ソフトバンク系と楽天系の二本のラインが展開していますが、それらの整理の過程をにらみながら、ワンコイン=三連単、系の新しいライトな競馬ファンのニーズに応えてゆく体制をさらに充実すること、です。

6.と共に、八枠枠連に代表されるこれまでの競馬ファン(団塊の世代あたりが中心)へのサービスも強化する。すでに、二年前の第一次競馬法改正で、控除率を馬券の券種によって案分していいようになっているので、枠連単勝複勝などの券種の控除率を10%あたりまで下げ、逆に三連単三連複などは上げる、といったきめ細かなサービス(とは言え、欧米では以前から常識)を導入する。

7.とにかく「官」はカネ勘定と公正確保のための最低限の部分に縮小し、それ以外は全て民間に任せてゆく、そのための環境整備を即座にやらねばどこの競馬場でも未来はありません。

……ということです。

その上で、名古屋固有の課題としては……

1.東海圏でのナイターが可能な競馬場をつくること。具体的には、名古屋と笠松、場合によっては金沢も含めた話し合いの中で、最も効率的な方法を考えることです。個人的には、JRAの中京競馬場をナイター化してJRAと共用するのが最善の策だと思っています。いずれにしても、単に名古屋や愛知県の枠組みでなく、東海地区でいかに馬券収益を効率化してゆくか、という観点からの、周辺の主催者や行政を巻き込んだ企画立案が必要でしょう。

2.弥富トレセンをどう利用するか。トレセンとしては全国的にも屈指の施設ですから、ここに笠松や金沢なども含めて厩舎施設を集約することも、検討されていい。ここをターミナルとして、東海地区内の各競馬場へ出かけてゆく、というシステムを構築してゆくことです。

3.「民営化」に際しては、いわゆる全国区のIT系企業などだけでなく、地元資本との連携を重要視すること。Jリーグはもちろん、プロ野球パリーグでも、ロッテや日ハムなどが「地域密着」で成功したように、ガリバーと化して地盤沈下が止まらないJRAばかりを雛型にするのでなく、逆手を取って地方であることの強み、小さな競馬場の愉しみを積極的に「地域密着」で発信してゆく、そんな発想の転換が必要です。

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名古屋競馬「だけ」が生き残ることは絶対にあり得ません。その他、どこの競馬場であれ、そこ「だけ」で生き残ろうとする、その発想そのものがすでに致命傷です。やる気のある主催者同士、厩舎関係者同士、共に手をつないで何とかしようとする、これまでの競馬に関するルーティンをひとまず棚に上げる、そんな構えと発想がないと、このニッポン競馬の激動期は乗り切れません。