高知競馬と言えば、少し前はハルウララ、今じゃいち早く通年ナイター競馬に移行する英断を下して、真っ先につぶれるだろうと言われながらしぶとく生き残っている競馬場。その高知競馬で前代未聞の騒動が持ち上がっていた。
「実はこの春先からずっともめてたんですよ」と言うのは、地元一般紙の記者。地元の高知県馬主会から脱退したいという馬主が十数名、連名で脱会届を出した。そうしたら、馬主会側が「馬主会に入っていない馬主の持ち馬は出走させない」と言い出して、主催者もそれに乗っかったのが発端。
「これまでの慣例だって言うんですがね。でも、黒船賞に中央の馬主の馬が来ても馬主会に入れなどとは言ってないですし、第一、いまどき地方に馬入れてくれるならどんな人でも大歓迎なのが普通ですよ。それを昔ながらのやり方で押し通そうとした馬主会がアホなんですが、また主催者がその言いなりになったから話がこじれた」(前記記者)
頭に来た脱会馬主側は、持ち馬を出走させろ、と地裁に仮処分申請。これが長引き、ここの9月末にようやく裁定がくだり、脱会馬主側の言い分が全面的に認められたのだが、腹の虫の治まらない馬主会側が今度は、雑賀(正)厩舎の馬とは一緒に走らせるな、との申し入れを主催者に。
脱会馬主は全て、雑賀正光厩舎に馬を預託している人たち。高知の雑賀(正)厩舎と言えば、大井や盛岡など交流重賞に果敢に出走、馬券にからまないまでも着争いくらいはやってのける全国区の実力派。高知の調教師会会長でもあり、47頭からの管理馬を擁する地元の有力厩舎を、馬主会が名指しで目の敵にするという、さらに前代未聞の事態に。もちろん主催者もこれは呑めないと拒否の姿勢だが、「いやもう、馬主会ともあろうものが子どものケンカですわ。恥ずかしいてよそにはとても聞かせられん」(ある地元馬主)。
そもそも、仮処分が出るまで半年もかかったのが異常で、また、馬主会が出走手当の一部をプールして故障馬の見舞金などに充てる制度をめぐる不透明な部分など、古き悪しき地方競馬の癒着体質が表面化するのを避けたから、という見方もあるが、それにしても、その間半年も競馬を使えないまま辛抱した厩舎もすごい。
「要は兵糧攻めなわけで、馬主より先に調教師が音を上げるのが普通で、半年どころかひと月ももつわけがない。でも、雑賀師は連携している福山に地道に馬を出走させたり、その他の地区の交流戦に挑戦させたりでしのいでましたね。」(地元の厩舎関係者)
他の競馬場でも同様の癒着は「慣習」として残っているとも言われる。待ったなしの崖っぷちの続く地方競馬、そんな「慣習」をタテに無意味な争いをやっている状態ではないはずなのだが。