荒尾「廃止」に「三セク債」の秘策?

*1本年度限りで約13億6千万円の累積赤字を抱える荒尾競馬熊本県荒尾市)の廃止が決まった。清算総額は建物の撤去や競馬関係者への見舞金などを含め、最大40億円とされる。県とともに競馬組合を組織し、荒尾競馬を管理・運営する同市の負担は大きい。ただ、前畑淳治市長は6日、これまでの方針から一転、県に負担を求めない考えを明らかにした。同市は10年での償還が可能な「三セク債」で、この難局を乗り切ろうとしている。

 同日午後、熊本県庁。蒲島郁夫知事と向き合った前畑市長は、「清算費用の一部負担を県に求める」との考えを封印した。蒲島知事が、1955年に県と市が交わした覚書で、経営難の場合「不足金は荒尾市が補てんする」と明記されていることを理由に、「負担は考えていない」と5日に明言していたためだ。

「あれだけ知事が経済的支援は考えていないとおっしゃっているので…」。前畑市長は記者団にそう語った。

 市の貯金に当たる財政調整基金は7月末時点で約24億5千万円。清算に全額投入しても足りない。単年度で清算する場合、一般会計から新たに支出すれば、市は自治体財政健全化法でイエローカードに当たる「早期健全化団体」に転落する恐れがある。

 いかに清算費用の負担を軽くするか。それは、競馬廃止に踏み切る際のハードルでもあった。

 市が目を付けたのは、10年償還の地方債「第三セクター等改革推進債」(三セク債)。2009年、イチョウ並木が色づき始めた熊本県庁。市町村総室の電話が鳴った。

 「公営企業になれば、競馬も三セク債の対象になるのでしょうか」。電話をかけてきたのは、市の財政課職員。当時、競馬の経営改善策を検討する一方で、廃止後の清算で力を発揮するツールとして、「三セク債」の可能性を探っていた。

 三セク債の対象は第三セクターと公社、公営企業だけだが、荒尾競馬組合が、独立採算制が原則の「公営企業」になるには会計処理の仕方を変えるだけでよい―県を通じて総務省のお墨付きを得た市は、荒尾競馬の公営企業化を急いだ。今年2月、歳入・歳出だけでなく、資産価値も含めて把握できる会計方式を導入した。

 市はこれまで表向き、会計方式の切り替えは「経営の透明化が目的」と強調してきた。「廃止」の混乱を避けるための窮余の策だった。ただ、三セク債に詳しい宮脇淳北海道大教授(行政学)は「行政が危機管理をするのは当然。しかし、三セク債については関係者に説明する責任はあったはずだ」と指摘する。

 競馬廃止へ向け、用意周到に進めてきた荒尾市。幹部は「県が負担しなくても、三セク債と財政調整基金で何とかなる」と、今後の展望を描いている。

*1:地元紙含めて知ってる向きはしっかりご存じだったことをここに来てドヤ顔で出されても……「中津方式」が下敷きになってて「見舞金」でしかないことの解説とかまるでなしなのも納得ゆきませんね。