勝巳さん、のこと

「前の開催の話を聞きにいったら、馬の特徴からレースぶりまですべて仔細に覚えてて話してくれた。弁が立つわけじゃないけど、馬に乗ったことがない素人が聞いても、内容が的確に伝わるんだよね。そういう意味じゃ〈競馬アタマ〉が抜群にいいんだよ」

ライデンリーダーでの中央挑戦のあと、勝己さんは騎乗機会を求めてマカオや中国に飛んでいる。そこで〈世界〉を見たんじゃないかなあ。あ、いや、でもそれってよく言われる凱旋門賞とかドバイとか、そういうことじゃなくて、何ていうか……『競馬の世界には、まだ上には上がある』って意味のね。言われる「国際化」とかよりもっと広くて深い、本当の意味でのワールドスタンダードな競馬、競馬を仕事として生きるホースマンの世界みたいなもの、その共通性や歴史なんかも含めたありようを、肌身で初めて「わかった」んだろうと思ってる。そういう意味で、お山の大将から一騎手に立ち返れたことで、騎乗フォームの修正等にも素直に取り組めた。中央に移籍して、特に結果出してからは本当に自由に楽しんで乗ってたように見えたもんね。なんかもう達観してたんじゃないかなあ」