「憲法違反」と留学生問題、他

① 学問の自由の侵害と言われたことについて

 1月の3回目の裁判の準備書面において札幌国際大学側は、なんと留学生に日本語能力を問うことが「学問の自由」「大学の自治」に抵触するおそれがある、と主張してきました。学ぶ意志のある者の自由を阻害する、という理屈のようですが、話にならないのは言うまでもなく。これだと、大学の入学試験自体がそもそも憲法違反という理屈になりますよね。

 逆に日本人が海外の大学に留学する際にも、たとえばアメリカの大学ならTOEFLその他で英語の能力問われるのはあたりまえですよね。日常会話ならいざ知らず、大学という高等教育の場で使われる外国語としての日本語が理解できなければ、いくら熱意だけがあっても現実に教育の実はあがるわけがない。もう、こうやって説明するのもバカバカしい主張ですが、仮に裁判における戦術だとしても、こういうバカバカしいことを法廷に提出する準備書面に平然と書いて主張してくる、そこまで論理的思考ができなくなっているのが札幌国際大学の経営にあたっている法人だということを証明しています。

 こちらが主張している留学生入試や在籍管理のコンプライアンス違反やガバナンスの不適切について、反証をあげて反論してくることができないらしくて、こういう大風呂敷をいきなり広げてきたというのはあるでしょう。また、憲法をひきあいに出すのは「最高裁までいくからな」というブラフの意味もあるようで、これは裁判所に対する牽制も含めてなのでしょうが、ならば上等、こちらも最高裁まで憲法判断を求めることもやぶさかではありません。それくらいメチャクチャな状態になっています、札幌国際大学の問題は。

 実際、本訴とは別に先日高裁で棄却された自分の仮処分申し立てにおける大学側の主張でも、実際に大学が教員を雇用しても、大学の図書館その他の研究施設を使わせる権利まで自動的に付与するわけでもなく、また特定の講義をもたせるとは限らない、と主張していることも、これまた「学問の自由」「大学の自治」に抵触するおそれのある議論になってくるわけで、これはもう最高裁に抗告する手続きをとりました。


② 中国の侵略を肌身で感じられるか? 事例をあげてください

 大学で日々の仕事をしている限りはそういう実感は正直、薄かったですし、「侵略」と呼ぶような事実もまあ、なかったと言っていいかも知れません。

 ただ、たまたま懲戒解雇を喰らって裁判沙汰になったことで、いろいろ勉強したり取材したりすることがたくさんあったおかげで、ああ、これは「侵略」という言い方が適切かどうかはともかく、何らかの意志が働いてこうなってきているんだな、ということは実感するようになりました。それが中国という国家なり何なりの意志かどうかまではわかりませんが、少なくとも中国側とこちら日本側とのある部分、ある組織などが複雑にからんで、結果的にこういう事態になってきているんだな、と。

 大学の留学生というたてつけで労働力としての外国人、実質中国人を大量に入れよう、という目的にために、「大学」という聖域をそれこそ「学問の自由」「大学の自治」など戦後憲法の枠組みを利用して治外法権にした、それは戦後このかたの過程の上にそうなってきたところがあるわけですが、それを逆手に取って、大学にだけはN2の日本語能力を文書その他にはっきりと明言しないままだったわけです。日本語学校などにはN3とか明言して指示しているにも拘わらず、大学だけは「そんなこと言わなくてもあたりまえだよね、高等教育機関だし、それくらいわかりますよね」ということなのでしょう、いずれにせよN2明示をまずしてこなかった、2年前に東京福祉大学の一件が露呈するまでは。

 結果的にグレーゾーンをつくる抜け穴をそのままにしておいた、と見られても仕方ない。政策的な意図があったかどうかはわかりませんが、文科省が結果的にそういうことをしていたのは事実で、それを悪用して何でもかんでも「大学側の解釈の範囲」で留学生を入れまくるビジネスモデルをやらかす私大がたくさん出てきた。それらの結果の「留学生三十万人計画」の目標達成でもあったように思います。

 例の前川の片腕の嶋貫和男理事が、国際大学の経営戦力委員会というところで「N2どうこうは大学の運用によって解釈の幅があるので」といった発言をして、それをきっかけに大学側の暴走が加速されたということは、議事録その他で確認しています。ということは、文科省時代にこういう認識は省内で共有されていたのでしょうし、その上でそのようなビジネスモデルを結果的に後押しするようなことも、全国的にされていた時期があったんだろうな、と。

 ただ、国家安全保障の観点から、外国人留学生についての政策転換がされるようになり、労働力としての外国人は留学生枠ではなく研修生なり何なり別の枠組みでするようになりつつある中、これら古い留学生ビジネスモデルは清算されるべき時期になっています。それは日本語学校などでは数年前から予測して動いてましたし、大学でも留学生はこれまでよりずっとハードルを高くして精選して入れるような仕組みに変えてきています。なのに、そのタイミングで国際大は古いワヤなビジネスモデルに飛びついてポカをやらかしたということでないかと。


③ このままいったらどうなるか。

 大学については、国際大は早晩、留学生ビジネス破綻で大学自体、危機に陥るでしょうが、その他の大学の留学生ビジネスは新たな状況に対応しながら、粛々と維持されてゆくとみます。日本語学校も少人数で精鋭を育てるような、外国人留学生向けの大学予備校みたいなビジネスモデルに移行していますし、実際東京などもう中国人経営のそういう中国人向けの大学予備校ができて動き始めています。

 観光と同じで、中国人が中国人留学生のために高校や予備校から大学まで、言わば一貫教育でシステムを整えてきているとみれば、国際大の問題はそのバグみたいなポカの例にすぎず、本体の思惑やシステム整備は今後も行われてゆくでしょうし、それは大学からあと、日本国内に中国人向けの就職先を準備することと連動して、結果的に「侵略」と見ていいような事態がどんどん露わに、普通の日本人の眼にもあらわになってくると思います。

*1

【ch桜北海道】いよいよ危険水域!中国の侵略が進む北海道[R3/1/21]

*1:以下の番組のための事前取材といった形の質問に対するメモ。20分頃から