陳述書 2022.3.22 (現在の心境)

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 不当な理由と手続きとで、大学を一方的に懲戒解雇されてから約1年9ヶ月、現在の心境など陳述します。

 不当な懲戒解雇によって、大学の教員として、担当する学生たちに何ら予告なく、十分な説明もできないまま教室を離れることを余儀なくされ、教育ができなくなったことはもとより、研究の場も環境も奪われ、大学に残してきた書籍や資料もこの間、参照することもできない状態になっています。大学教員というのは、学生との講義や演習などを含めたつきあいや会話、議論によっても、自分の研究内容を磨き上げる機会を持つものですが、それらも含めた研究者・教育者としての研鑽の機会もまた当然、自分には不当に失われたままです。一日も早く、元の身分を回復できるよう、裁判所には公正な判断をくだしていただけるよう、改めてお願いいたします。

 当時、受け持っていた3年生のゼミ生たちは、先日、卒業式を迎えました。必ず戻ってくるから、と言っていた約束が果たせず申し訳ない旨、LINEを介して伝えました。卒業しても、困ったり悩んだことがあったら、いつでも大学にやってくるように、とも言いました。また、OBOGら卒業生たちも、大学側に対して質問状を送付して、この懲戒解雇の件についての見解を求めていましたが、事実上何の返答も得られないまま、自分の母校に対する不信感をずっと募らせています。学内の教職員に対して、自分のこの件も含めて進行中の大学を被告とした複数の裁判についての進行状況も何ひとつ説明されないままです。

 また、自分の所属していた人文学部現代文化学科は、その後即座に募集停止となり、学科は改編され、この4月からは新たな学科となっています。自分の戻る場所をなくす目的があることは、当時の同僚だった現代文化学科教員たちのほとんどが、その新しい学科に配置されず、旧学科の言わば「残務整理」的な仕事に押し込められていることなどからも明らかであり、また、彼ら教員たちもそのように大学側から申し伝えられています。

 さらに、この3月で解雇や辞職、雇い止めなどになって大学を去る教員たちの中には、「城後前学長と親しかった」という理由も含めて、口頭で申し渡された者もいると聞いています。学内での異動も当人への打診や所属部署の長などへの相談を抜きにいきなり、しかも高等教育機関である大学のカリキュラム上の専門性やそれに必要な業績等の要件も無視した配置を恣意的に行っています。労働者代表の教員が教職員の希望や意見を集約して大学側に通知していたことに対して、上野理事長自ら、労働者代表と教職員全員に対してそれぞれ、事実上「恫喝」に等しい内容のメールを送付してもいます。いずれにせよ大学組織の基本である教学部門の独立性を全く無視し、教育と研究の両立、そして在籍学生へのよりよい教育のおこなえる体制の整備など、等閑視した経営がさらに進んでいます。

 このような現状なので、現在、大学にまだ残っている教員や職員たちの間では、上野理事長や大学側の指示に従わないと、たとえそれが業務や職務の上で必要で合理的な意見であっても、「異論を呈した」「指示に逆らった」ということを理由に懲戒処分や不当な解雇も平然と行われる、という認識が一般化していて、事実上の恐怖政治、独裁国家のようなありさまになっています。これは、学内に残っている教職員たちから、折に触れて聞かされていることであり、中には別途、何らかの手段に訴えることを考えている者もいます。いずれにせよ、理事長や大学側に阿って唯々諾々と指示に従う者たちばかりが重用されています。法人の理事会その他の体制も全く同様で、赤字続きの経営状態に対する正当な検証などできない状態ですし、本件で問題になっている留学生の問題についても、お手盛りの第三者委員会の報告書を出したまま、その後全く、理事会などで取り上げられ、検証なり反省が行われていないままです。このように、教学も法人も、大学としてはもちろん、組織として全く自浄のおこなわれない体制になっていることは明らかです。

 裁判の過程で、すでに各種の証拠と共に明らかになってきているように、城後前学長が、留学生入学に関する大学側のやり方に是正を求め、現場の教員たちと共に入学させた日本語能力さえ不十分な留学生に対して大学としてできる対策をいろいろ練って改善を図っていたにも拘わらず、上野理事長以下、大学側はそれらに誠実に対応しませんでした。逆に、教学側の要望など無視した不当な手続きで、城後前学長を事実上「解任」に等しいやり方で追い出し、その後も、当時城後前学長に同調して動いていた自分以下、関係する教員たちを懲戒処分にしてきました。自分の懲戒解雇処分が、そのような報復的な目的で行われたことは、教職員の間では自明の認識であり、そのやり方も、労働基準法の「即時解雇」の手続きをほとんど無視した不適切なものでした。何より、「懲戒解雇」の理由自体、常識的に考えてあり得ないもので、このようにあらゆる意味での無理無体、コンプライアンスもガバナンスも適切に運用できないまま、「城後前学長と共に動いていた」者たちを学内から排除しようという動きが、城後前学長の事実上の「解任」から自分の「懲戒解雇」以降、さまざまな形で大学内で加速されています。

 自分自身の身分の回復が裁判の目的であることは、言うまでもありません。ですが、と同時に、残された学生たちや学費を支出している保護者などへの責任を果すために、大学として自浄と改善に努力することもまた、奇しくもこのような状態に置かれるようになった自分に課せられた使命だと思っています。そのために、問題の留学生入学に関して、上野理事長以下、大学側の幹部関係者などが行ってきた、大学として不適切な各種行為や取ったやり方について、法廷の場で事実を明らかにすること、そのために必要な関係者たちに法廷の場で証言をしてもらうこと、それによって城後前学長以下、当時この問題に関連して悩み、苦しみ、どんな状態であっても大学であることを信じ、事態の改善を信じて動いていた教職員たちの名誉もまた、回復されることを強く望んでいます。

*1:2022年3月29日の裁判期日に向けての陳述書。