1992-05-01から1ヶ月間の記事一覧

叩く側の誠意、叩かれる側の貫禄

*1 ここしばらく、右へならえして左翼叩きが始まっている――。 なんて、すでにどこかの新聞の囲み記事なんかで誰かが必要以上に深刻ぶって言ってるかも知れないけど、そりゃ違う。勘違いだ。正直に言おう。それは“叩き”というほど元気の良いものでもなくて、…

引き裂かれた言葉――『朝日ジャーナル』休刊騒動が陥ったドツボ

*1 ――最後の最後まで、恋は私を苦しめた。 指をつき抜け涙がこぼれそうよ。 ● 今の今まで、『朝日ジャーナル』を半ば習慣のようにあたりまえに読んでいた人たち、というのがいる。 『別冊宝島』であれ『サンデー毎日』であれ『クレア』であれ『ミュージック…

だまされた、と言う前に

*1 *2 同世代、というとせいぜい三十代半ばから下、二十代のケツあたりまでということになるのだが、そういう彼ら彼女らの中で、雑誌や出版、放送に広告、いわゆるメディアの周辺の仕事に携わってきた連中が、「結局、だまされてたんだよなぁ」と弱々しく苦…

コミックボックス

趣味は社会主義――『朝日ジャーナル』という「趣味」の雑誌

*1 今も『朝日ジャーナル』を読んでいる人たち、というのがいる。 いや、天下の朝日新聞の、それも売りものとして世間に流通している雑誌なのだから落ちぶれたりとは言え何万人かの読者はいるのはあたりまえ(かな?)なわけだし、第一そういう人たちがいら…

安田里美=人間ポンプ 聞書

● 関東平野の広さというのは、実は東京に住んでいる者にとってもあまりよく実感できないものだったりする。 山が見えない。川も伏流している。目標となるような建物も少ない。だから方向感覚が狂う。どっちへ行ってもただ広いだけ。同じような道が同じように…

解説・赤松啓介『非常民の生活文化』

*1 *2● 八〇年代半ば、『非常民の民俗文化』(明石書店)をひっさげ、半世紀にわたる長い沈黙を破ってこの国の民俗学の表舞台に再登場した赤松啓介翁の記述を支える素材は、その出自におおむねふたつの焦点を持っている。 ひとつは、大正中頃から昭和初期に…

死んでこい、という非情

*1 今年の正月のことだ。家の者も出かけてしまい、これ幸いとひとり寝正月を決め込んでいた昼下がり、突然、玄関のチャイムが鳴った。寝巻姿で出てみると、きちんとダブルのスーツを着込んだいい若い衆が、ちょっと照れ臭そうな笑顔で、頭をかきかき立ってい…