公営競馬が面白い

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 公営競馬が面白い、というのはある部分、「ザ・競馬」である中央競馬との距離感で決まってくるんですけどね。ただ、公営競馬もいろいろで、南関東のそれこそ大井みたいにほぼ中央並みの規模のところもあれば、益田みたいに一着賞金数万円、ノリヤクがケガしたら番組が成立しにくいようなところもあるわけで、ひとくくりにはできないと思います。

 ただ言えるのは、ふつう公営競馬は平日開催ですから、平日真っ昼間からバクチ打ちにくる人間の世界だってこと。それと、馬との距離が近いこと。ついでに食いものが安くてうまいこと。競馬場の最低条件ってこれくらいだと僕は思ってますから、別にハデなスタンドなんかいらない。どう取りつくろったってこれはバクチなんで、そのバクチであるこ
とを決して忘れてないところがいいんです。客も馬もノリヤクも、みんなささやかなゼニ
カネに一生懸命ってのがあからさまでね。ささやかで一生懸命。ね、いいでしょ。

 おすすめですか? 公営はどこも好きですが、東京からなら南関東四場(大井・川崎・船橋・浦和)だけでなく、ちょっと足伸ばして北関東三場(高崎・足利・宇都宮)なんかいいですよ。ジイさんバアさんが多いのも雰囲気です。岩手や道営も馬産地競馬でいいですね。以前、九歳馬の引退レースで寿賞ってのが暮れの水沢にあって、好きでよく通ってました。あと、地味ですが上山。大井のサンオーイが中央に殴り込んで故障した後、ここにおりてきてほとんど三本脚の状態で三十馬身ちぎったという「伝説」のある競馬場。小さな正しい温泉競馬って感じで、いずれどこか前科持ちの馬たちがのんびり競馬してます。



*1:BRUTUS』依頼原稿。あのマガジンハウスでさえも、ごくたまにだけれども仕事の注文はあったし、ちょっとした続きものまがいのこともしていた記憶はある。まあ、先方の勘違いが何かあったのだろうことは、当時の自分の肩書き(某国立大学助手)という光学迷彩ゆえだったのだろうとは思う。それが証拠に、野良になってからはきれいに接触はなくなった。………221125