明大ラグビー、北島監督の死

 北島忠治監督が亡くなった。 

 小生、恥ずかしながら草ラグビーにも自ら首突っ込むほどのラグビー好きでして、世間一般の感覚からすれば「誰だよ、それ」となるニュースかも知れませんが、この明治ラクビーの権化のような存在だったジイさまの訃報はやはり感慨深かった。「前へ」というのが有名になったスローガン。相撲部からラグビーへ転身という経歴もすごいけど、晩年はどこか理屈を超えた“日本ラグビーの象徴”のようなところまであった。

 とは言え、ラクビー人気は最近また下火だ。高校あたりではラグビー部が成り立たなくなっているという話も耳にする。ラグビー好きはこれもサッカー人気のせいにしがちだけれども、考えればチームを作るのに必要な人数が多すぎるのだ。草ラグビーにしたところで十五人揃えるのはひと苦労で、いざ試合の日、キックオフ直前まであと三人、あと二人、とまるでかつての雀荘でメンツを待つ心持ちでやきもきすることは珍しくない。敵でも味方でもいい、とにかくプレーできる人間がやってくれば拍手モンで迎えて足りない方に入ってもらう始末。現に、最近はそういう似たもの同士の貧乏チームが集まって混成軍で試合をするケースが多くなっている。

 それでも、試合さえできれば満足するのだからラグビー好きはお人良しだ。何よりカネがかからない。スキーにせよテニスにせよ、始めるには道具や衣装にそれなりに投資が必要だが、ラグビーはシューズとジャージがあればまずOK。あとはケガにさえ気をつければ身ひとつで楽しめる。

 ただ、新たに一から始めようという人間のための場がない。野球やサッカーのように見よう見まねというわけにもいかず、といってスキーやテニスのようなスクールもない。いきおい、草ラグビーも経験者ばかりで、いきなりズブの素人が入るのは敷居が高い。

 それにグラウンドが決定的に少ない。この点はサッカーや野球が心底うらやましい。さらに、これは東京だけかも知れないが、協会の管理がちと強過ぎる。大会での試合前のドレスチェック然り。レフェリーによるお説教然り。きっちりした社会人チームの公式試合ならいざ知らず、たかだか草ラグビーでそんなにうるさく言わなくても、という気分になるのも無理からぬこと。おかげで、めんどくさいこと言われるのなら大会なんか出ないで勝手に楽しもうぜ、という機運も出始めている。

 高校から大学へと陽の当たるところを歩いてきたラグビーエリートたちの世界観からもれる〈その他おおぜい〉にとってのラグビーの場が十分に尊重されない現状は決していいものではない。ぐうたらでええ加減でお人良しなこういう草ラグビーの愉しみにこそ光あれ、なのだ。