紅白歌合戦、復権

 年末大晦日の恒例『NHK紅白歌合戦』の視聴率が、53.9%を記録したそうであります。年々凋落が言われていた“偉大なるマンネリ”にしては大健闘の盛り返しとか。

 小生、この日は朝からずっと大井から船橋と競馬場をはしごしておりまして、ありがたや、奇跡的にあったかくなった懐をなでながら知り合いを呼び出し、ちょいとうまいそば屋で年越しそばをかっこんで実家に戻ったのがあいにく深夜12時前。ゆえに、今年は紅白も何もちゃんと見ていないのだけれども、途中で立ち寄った仕事場のテレビで眺めた限りでさえも、民放のやる気のなさはちょっとすさまじい印象があった。特に日テレが延々やってた馬鹿騒ぎはひどかった。かつてあった『裏番組をぶっとばせ』ノリのドンチャン騒ぎなのだが、これが笑えない。楽しめない。予算的にも人員的にも相当大がかりなことをやっているのだろうに、次々に切り替わるどの現場もちっとも楽しそうじゃないし、何より安心して見てられないのだ。53.9%という数字は、紅白が復活したというよりも、むしろそれ以外の民放が勝手に自滅してしまったというのが正直なところなんじゃないかと思う。

 元日も恒例の『スターかくし芸大会』よりも『電波少年スペシャル』の猿岩石の方が視聴率をとったという。昨年来猿岩石断固支持を表明した小生としては見ましたよ。やっぱり面白かったもの。『スターかくし芸大会』というのは、まだ芸能界が正しく世間と一線を画したクロウトさんたちの世界だった頃、その内輪の盛り上がりでもっていたところがある。ハナ肇が緑青色した胸像になったり、女性歌手が二人羽織やってみせたり、そういう「お約束」が必ずあって、それをまたきっちり演じてみせる。安心して見ていられるというのは、そういう型通りの「お約束」を陳腐でなくやってのけられるだけの芸の器量があるということなのだ。これはむしろ詳しい人に教えてもらいたいのだけれども、今のテレビの現場にはそういう器量を尊重しようという雰囲気は乏しくなっているんじゃないだろうか。

 その意味で、SMAPが今これだけ支持される理由というのも、単にカッコいいだけじゃなくて、そういう「お約束」をきっちりやろうとする芸能人としての信頼感があると僕はにらんでいる。意外ですか? でも、彼らが料理作ったりコントやったりする『SMAPSMAP』でしたっけ。あの番組なんてそういうかつてあった芸能界の「お約束」を今、この時代にきちんと守ろうとしていて、そのクロウトの価値観への忠誠心に感動する時があるもの。もう勝手にトンガったり馬鹿騒ぎしたりするばかりがテレビに求められている「面白い」じゃないと、僕は思う。