NHK女子アナの謎

女優になりたい、というのはわかる。歌手になりたい、というのも理解できる。ミュージシャンになりたい、というのも今どき自然だ。だが、アナウンサーになりたい、という感覚はまずもってわからない。とりわけ、今どきの女子学生などで「キャスター志望」とか平然とぬかす手合いなんぞは、こちとらにとっちゃほとんど異星人。いらぬ摩擦を起こす前に初手から遠巻きにして敬遠するのがお互いのため、とひとまず割り切ることにしている。

何でも今のNHKの人気女性アナの一人、草野満代サンが民放に移るとか移らないとかでまたぞろ騒ぎになっているようですが、そんな小生でありますからして、このテの“移籍”話がどうしてそんなに大きなニュースになるのか、申し訳ないが全くわからない。こんなこと言うとまた叱られるだろうけど、要するに今様の電波芸者。他人の書いた原稿をきっちり読むというのがアナウンサーという仕事に本来要求される条件だろうし、もちろんそれに伴う熟練というのもあるのだろうけど、今やそれに加えて必要以上に妙なプライドや自意識がふくらんでくっついてくのを野放しにして、それをまた局の側が売り物にする始末。昨今の民放の女性アナなんて冗談じゃなくそういう扱いざんしょ?そりゃあなた、どこかで勘違いした面妖な代物ができあがって不思議はない。

そんな民放の現状と比べれば、確かにNHKの女性アナウンサーというのは画面で見ていてもある独特の雰囲気がある。もちろん人手不足とソフト不足のはなはだしい昨今のテレビ業界のこと、さしものNHKと言えども外部制作の番組も多くなっているし、画面に出てくる女性アナウンサーみんながみんなNHKの職員というわけでもなくなっている。だが、にしても、だ。やっぱりどこか“NHKっぽい”ところは良くも悪くも厳然としてある。考えてみればあれは不思議だ。

とは言え、宮崎緑であれ畑恵であれ、どうも近年NHKから民放へ移った女性アナウンサーたちのその後というのは、それまで「NHK」という金の額縁の中にいる限りバレずにすんだ余計な自意識やけったいなプライドなどがうっかりとバレちまって元も子もなくなることが多い。“NHKっぽい”のが民放の舞台では全く裏目に出るのだ。この“NHKっぽい”というのは、つまり「息子の嫁にしたい」と世のオヤジたちがうっかり思ってしまうようなたたずまいに他ならない。とすれば、移籍を言い出す女性アナに対してNHKの側がまるで箱入り娘の自立に手を焼くオヤジみたいな不自由な反応をついうっかりしてしまうのも、これまたむべなるかな、なのかも知れませぬ。ま、どっちにせよ、その程度のこってす。