いいオトナが女子高生について朝まで討論すんなよ

 他人の仕事にちゃんと眼を配るというのは、どんな稼業にもあることだと思う。

 雑誌などでは吹けば飛ぶよな読まれ方をされがちなコラム系もの書きにしても、不肖大月、実はこれでも同業者としての個人的な好みってのもありやして、たとえば神足祐司のいかにも手間暇かかってそうで、でもきっと今どきの若い編集者などはそういう手間暇についてまるでわかってくれてなさそうな薄幸そうな原稿とか、知る人ぞ知る風俗ルポ文体の創始者、島本“なめだるま親方”圭のもはやすでに身体の一部と化しつつあるあのうら哀しいノリの凄味とか、いやあ、やっぱり一読者として好きなんっすよねえ。 そういう意味で最近、おっ、と思ったのが、松野大介というライター氏。いや、素性も何も全く存じ上げなくて申し訳ないんだけれども、一読して思わず「おっしゃあ~っ」とガッツポーズしてしまった。いや、今どき珍しくいい威勢なんですわ、これが。

 目撃したのは『Hanako』誌上の「TV360ch」という連載コラム。なんでそんな女性誌なんか読んでんの、と問うなかれ。多角経営のための市場調査もしとかんことには、不肖大月、ほんとに食いっぱぐれそうなんすから。

 「いつだったか、偉そうなヤツらが集まって、コギャルについて朝まで討論してやがんの。たとえば戦争問題なら討論しても勝手だけど、いい年した大人が女子高生について朝まで討論するなよ。」

 おお、まずは異議なし。座布団一枚、てな感じですな。

 「いかにも『オレは大人だけど若い女子高生の気持ちがわかるのだ』みたいな感じで知識の叩き売りというか知ってることだけベラベラしゃべって、なかには『いまの女子高生の5人に1人は援助交際をやろうとしたことが……』とかいう。おまえは日本全国の女子高生に聞いて回ったのか! おまえはそんなに暇なのか?」

 ダハハハハ、おかしいおかしい。座布団三枚だ、こりゃ。 あ、なんでこんなに僕がウケてるか、よくわからないという方もいらっしゃると思います。別に技巧的な文章でもないし、中身も世間の多くが口にせずとも思ってることだし、なんだ、こんなの俺でも書けるわ、とかね。

 でも、それってちょっと違うと思うんすよ。何の変哲もない直球の文章に見えるだろうけど、でも、それをここまでサラッと文字にし原稿にし、なおかつ雑誌に載せる、その間の過程も含めた書き手の自意識のコントロールの仕方ってのは、こりゃやはり素人じゃない。こんな「直球」をメディアの舞台に乗せて演じてゆける技術もあれば、その技術を駆使する輪郭確かな「主体」もある。それは書き手として今どきかなり貴重な才能だったりするのだ。

 問題は、この素人ではないあたりを『Hanako』の編集者がわかってるかどうかだけど、さて、どうなんだか。ともあれ、松野サ~ン、わし、ファンでっせ~、って俺なんかに言われても迷惑か。いや、こりゃどうも失礼しやした!