メイショウモトナリ、かきつばた記念・スノーエンデバー、群馬記念


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 このゴールデンウィーク、西へ東へ、地方競馬のハシゴをして暮らしました。

 まずは五月四日。名古屋の第一回かきつばた記念。今年から新設された指定交流重賞のGⅢです。距離は一,四〇〇メートル。出走頭数は十頭。中央からはマチカネワラウカド、スギノキューティーメイショウモトナリマコトライデンの四頭。その他笠松からエフワンライデンとハタカビッグワン、大井からはサントスが馳せ参じました。

 名古屋駅から飛び乗ったタクシーの運ちゃん、これがまたしんにゅうのかかった競馬好きで、うっかりしてると一緒に競馬場に駈け出しかねない勢い。以前は東京で仕事をしていたとかで、その頃は大井から川崎、船橋、浦和と南関四場を股にかけて歩いていたそうです。そのせいか、昔親しんだ騎手の名前が実に愛着たっぷりにポンポン飛び出してくる。

 「サブロウ(高橋三郎)、もう調教師になったんやてねえ。ヒロミ(山崎尋美)はまだ乗ってる? ああ、あいつももう調教師か。みんなタケミ(佐々木竹見)くらいまで乗ったら大したもんなんやけどねえ」

 ああ、その山崎厩舎の馬も今日は来てるよ、と言うと、うれしそうに笑った。大井の馬は? いるいる。人気はないみたいだけどハナ切ったらしぶとい馬だよ。ああ、そう、そらいっちょ買わんといけんね――降り際、なんとトランクから地元のスポーツ紙を出してくれるサービスぶり。うーん、こりゃぜひ勝たんといけんなあ。

 土古(どんこ)の名で親しまれる名古屋競馬場地方競馬の中では、岐阜の笠松と並んで東海ブロックの拠点です。けれども、あいにくの雨で馬場はどろんこの不良。人気はエフワンライデン。「笠松サンデーサイレンスワカオライデン軍団の最高傑作とまで言われる売り出し中の一頭で、ここを足場に帝王賞に挑戦するという勢いです。レースは、鈴木啓之のサントスがあおりながら何が何でもの気合いでハナに立ちました。泥をはねとばしながら逃げまくって直線も先頭。メイショウモトナリに二馬身かわされたものの、ハカタビッグワンの追い上げもしのいで二着残り。連複七十倍あまりの穴馬券の立役者になりました。あの運ちゃん、ちゃんと取ったかな?


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 翌五月五日は群馬・高崎競馬場。レースは第十回群馬記念。こちらも同じく指定交流GⅢで、距離は一,五〇〇メートル。十二頭が名乗りをあげて、そのうち中央勢は三頭。高知の黒船賞をレコード勝ちしたテセウスフリーゼを筆頭に、ビーマイナカヤマスノーエンデバー。その他笠松からフジノモンスター、川崎から中央下がりのワインアンドローズ、浦和から牝馬のエフテーサッチもやってきていました。

 天気は一転して快晴。馬場は不良から重という状態でしたが、足抜きがいいのでしょう、アラブのA級B級特別でレコードが飛び出すコンディション。人気は中央の二頭、ビーマイナカヤマテセウスフリーゼに完全にかぶってました。地元の強豪エムジーシューマやコラソン、新潟所属ながら冬の間は北関東に仮住まいしながら大暴れしてきたエビスヤマトなどもいたのですが、期待と馬券は別でした。

 小回り馬場がほとんどの地方競馬でも、高崎は向こう正面から三コーナーにかけて一気にまくっていっていいポジションにとりつく、俗に「高崎まくり」が鉄則。初見参のテセウスフリーゼ的場均もそのことは百も承知だったのでしょう。地元の意地を見せて果敢に逃げたコラソンとエムジーシューマのすぐ後を追いかけます。逃げられればなんとかなるかも、と思っていたエフテーサッチもこの三頭の気迫に負けて控えるしかありません。

 けれども、この先行策が裏目に出ました。ペースが速かったのか、定石通りのまくりを打った先行集団の背後にそっとつけた刺客が一頭。佐藤哲スノーエンデバーです。三歳時は新潟で走っていたマル地馬ですが、ここはほぼ二年ぶりのダート戦ということで中央馬の中でも人気の盲点になっていました。彼がここから眼のさめるような末脚を繰り出しました。早めにまくった馬の多くは直線で止まり、ビーマイナカヤマだけがそこから抜け出して完全に二頭の叩き合い。結果、あのホクトベガのとんでもないレコードをさらにコンマ六秒も縮める一分三三秒フラットという時計でスノーエンデバーの優勝。馬体重マイナス一二キロ。早めに境町のトレセンに入厩して調整してきたことが吉と出ました。考えてみれば父はキングハイセイコー。浦和所属で中央にまで殴り込んだ馬力自慢、レース中に隣の馬にまでかみつくという荒法師ぶりで話題になった馬ですから、その息子が小回りダートで大化けして何の不思議もありません。三着には距離不足と思われたエビスヤマトが後方から脚を伸ばして入線。というか、他の馬がやはり速い時計に対応できなかった分、展開的に恵まれての三着という印象でした。