岩手競馬の経営改善策について

 

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 ● ①地方競馬の相次ぐ撤退について率直にどう感じるか

 いわれのない大虐殺をじっと見ているような気持ちですね。競馬に限らず公営ギャンブル自体が構造的にダメになってきていて、JRAでさえ売り上げ減少に悩むこのご時世ですから、地方競馬すべてが生き残れるとはあたしとて思えませんが、ただ、つぶすにしてもつぶし方があまりにもずさんでいい加減ですし、将来を見越したビジョンも全く示せなくなっている。そういう意味で、「役人競馬」の終焉ですね。

 

 二ッポン競馬全体の未来を考える責任ある立場の不在、を痛感します。各主催者は言わずもがな、今や「張り子の虎」状態のJRAも、それらの元締めのはずの農水省も、政策的な視点が欠落しています。これは正しく農政問題であり、かつてなら「馬政」の問題だったはずです。戦前は、馬政局があり、それは国策として「馬」を考える立場だったわけで、

 

 それらの前提で競馬があった。戦後、単なる馬バクチのコマとしてしか馬産も考えられなくなったことのツケが、こういうカタチでまわっています。

  • ②104億円という累積赤字を抱え、経営が悪化する岩手でも、売り上げ低迷、賞金の減少、馬主(競走馬)の流出、という事態に陥っている。「存廃論議」そのものが売り上げ低迷に拍車を掛けているとも言え、厩舎関係者のみならずファンのモチベーションも下がっている。現在のほとんどの地方競馬で繰り広げられているこの存廃論議をどうみるか。

 「役人競馬」の「財政競馬」というパラダイム自体が崩壊しています。ということは、自治体主導で経営改善ができるはずがない。だからこそ、競馬法改正が始まっているわけです。

 

 ただ、岩手のケースは他の地方競馬の存廃論議と脈絡が少し違うでしょう。もともと「地方競馬の優等生」として我が世の春を謳歌してきたわけですし。

 

 確かに、専従の主催者職員の育成なども含めて、先駆的な施策をとってきて成果もあげてきたわけですが、しかし一方で、それもやはり右肩上がりの時代のJRAのやり方を真似た「プチJRA」化でしかなかった、というのも、今となっては一面の真実でしょう。JRAと先手を打って交渉して「岩手王国」を確保し、テレトラック網の整備で安定的な経営基盤を確率したものの、同時にJRAの場外売り上げのコミッション1%という悪しき前例を作って結果的にそれが以降、他地区のJRA場外の不自由を規定してきていたり、と、地方競馬の中で、岩手競馬のやってきたこと、についてはまだきちんと整理して検証されていない。ですから、ターゲットになっている藤原氏のやったことの功罪というのも、その意味で、もっと冷静に検証されるべきだと個人的には思っています。

  • ③上記の質問に付随するが、地方財政寄与できない競馬に存在意義はないとする財政競馬論をどう思うか。

 先にも言ったように「役人競馬」の「財政競馬」がダメになっているわけで、その意味ではもう「財政競馬」という枠組みも、このままでは維持できなのは事実でしょう。

 

 ただ、今、それを言う連中は自分たちの経営責任を棚上げする「役人」です。彼らは競馬をつぶそうとするために、その言い方を持ち出してくる。そういう財政競馬否定論には納得いきません。現行競馬法の前提が「財政競馬」ですから、タテマエとして未だいたしかたなし、という面はありますが、「役人競馬」から民営化して、ライブドア参入の件で議論になったような、ネットでの販売拡充その他の手を打てば、まだ財政競馬に寄与できる余地だってあると思いますよ。

 「役人競馬」の「財政競馬」はもうダメ、という前提での競馬法改正ですから、その意味では総論賛成、です。大きなポイントは「民営化」と、それによる「内厩制度の解体」でしょう。役人が関与するのは最低限の公正確保に限り、それ以外の競馬の開催と運営についてはできる限り民間にまかせる方向でしか、地方競馬は再生しないでしょう。個々の主催者の経営努力など超えたところでもう状況は悪化しているわけですから、まさに「構造改革」が必要だ、との認識で法改正に手をつけた、それは間違っていません。

 

 向こう二、三年の間に競馬法はさらに新しいものになるはずですし、その中で、地方競馬場をまとめてJRAのような組織に統括する方向が出てくるでしょう。今の地方競馬全国協会のように赤字の競馬場からもあがりをかすめとるばかりの天下り組織でなく、責任を持って全体を経営する主体を構築する。その中で、売り上げを効率的に配分する。仮に赤字でもニッポン競馬全体の中で必要ならばそういう競馬場には補填してゆくとか、政策的な施策がうてるようになるわけです。もちろん、生き残る競馬場には思い切った改革が必要ですし、できるところはナイターの平日開催中心で全国規模での情報提供と馬券販売を徹底するなど、そうなってゆくためにやるべきことは山積しています。

 

 ライブドア堀江社長がいみじくも言った「地方競馬は今が底値です」というのは、本来ならばもっと儲かるはずの競馬が「役人競馬」で荒れ放題になっている、という認識を示したものでしょう。赤字なのは競馬が悪いのでもなければ、厩舎関係者だけが悪いのでもない。ひとえに「役人競馬」の構造的な問題です。そこをクリアすれば、地方競馬はまだ再生の余地を十分に残していると思いますし、地方競馬が健全なカタチで残れないのならば、JRAや馬産地も含めたニッポン競馬全体も支えられない、ということを、競馬行政の責任者はもっと広く認識するべきだと思います。

*1:質問項目を送ってもらい、それに応える形でのコメントになった。その後、一度上京した時に直接会って取材も受けている。どこでも新聞記者はそうだが、基本的に競馬の、それも地方競馬についての知識はゼロ、という御仁がほとんど。けれども、きちんと情報を与えて対話すれば、彼らは地方競馬とニッポン競馬の現状について、まっとうな認識をみるみる持ってゆく、ということを中津以来、どこの現場でも痛感している。この朝日の盛岡支局の記者もそうだった。その程度にいまどきの新聞記者ってのは、やはりおおむね“優秀”なのだ。