ロンドン同時多発テロ報道

 

 つくづく、いまどきの新聞ってのは辛いなあ、と思う。何がって、「新聞らしさ」に自らはまって抜け出せなくなっちまってる、そこのところだ。ロンドンの同時多発テロ事件。海外の事件だから、とりあえず第一報段階じゃ情報が限られちまう。無難な通信社素材が中心で、そこに自前の特派員の原稿がくっつく程度。いちばんインパクトがあるのはやはり写真、なのだが、その写真の選び方にも「新聞らしさ」の縛りがかかったりするから浮かばれない。

 今回、新聞紙面に使われた写真は、二階建てバスの上半分が吹っ飛んだカットが一番人気。朝・毎・読に産経、日経と揃って一面にフィーチュアで、次が、おそらくやけどを負ったのか、顔面を異様な白いマスクで覆った被害者の写真。選び具合はまるで談合したかのように芸がない。もともと現地テレビからキャプチャしたものらしいから仕方ないのだが、それにしてもこの各紙横並びは見事なほど。「新聞らしさ」の呪いはかくも深刻らしい。

 そんな中で、毎日が八面一ページ分を全部写真構成で組んでいたのが目立った。どうせ海の向こうの第一報、文字原稿じゃそんなに違いは出ないんだからいっちょ写真でカマすか、という判断なら悪くない。これに対して、朝日などは行儀がいいというか、とにかく横並びでチョンボしないように、の官僚的配慮の気配がプンプン臭う紙面。もはやかつてのご威光地に落ち、世間から公然とブーイング浴びる火急存亡の危機の真っ只中、のはずなのにこののんきさは、はて、なんかに似てるなあ、と思ったら、そうだ、かの巨人軍そっくり。あるいは、三菱自動車とか。

 それでも、版が違えば一面の写真も続々差し替え、限られた紙面で戦闘意欲を見せているのはさすが「新聞」なのだが、でも、そういう報われない努力も「新聞らしさ」のうちなのだとしたら、これまた辛いなあ、である。