競馬の「プロ」養成を

 地方版ではありますが、この種の事実が新聞に掲載されて明るみに出るのは珍しい。

 でも、これは全国どこの競馬場でも同じようなもの、こういう「競馬議会」というのは、見事に競馬のことなど何も知らないセンセイばかりで構成されていて、何もしないで年何回か会議に出席して、たまに地元の競馬の立て直しには直接役に立たないJRAの夏競馬か、南関東のナイターあたりに視察旅行でもやって委員としての報酬を、といった構造はいずこも同じ。言い方は悪いですが、「座ってるだけで小遣いもらえるんだから」といった理由で、地方でも競馬華やかなりし頃なら競馬場のある自治体では人気のポストでもありました。もちろん、主催者であるお役人、あるいは競馬エスタブリッシュメントたち、せいぜい馬主会あたりの言いなりなわけで、厩舎関係者の現場の声など届く回路はそこには皆無。こんな偏ったコミッションで気がつけば「存廃」がみるみるうちにレールに乗って……というのが、これまでの地方競馬お定まりの不幸でした。その構造は、残念ながら今もなお、本質的に変わっていません。もっとも、本紙の読者諸兄姉ならば言わずもがな、いまさら何を、と苦笑いされるのがせいぜいではある話でしょう。

船橋競馬を運営する県競馬組合(管理者・森田健作知事)の議員が年4回の定例会出席だけで約100万円の報酬を得ている問題で、組合議会の定例会が27日開かれ、議員報酬を約2割減額する案が議決された。 減額後も全国最高額。

組合は96年度以降赤字が続いており、高額報酬を問題視する声が高まっていた。問題の抜本的解決を先送りする対応に、改善を求める意見は「馬の耳に念仏」だったのかと改めて批判を招きそうだ。 組合によると、削減後の年額報酬は、議長92万4048円(08年度118万8180円) ▽副議長84万3696円(同108万4860円)▽議員77万6736円(同99万8760円)。 報酬額が全国2位の愛知県競馬組合は約54万~37万円という。

県、船橋市習志野市による一部事務組合。議会は、佐藤正己(自民)▽小島武久(同) ▽堀江はつ(民主)の県議3氏と市議各1人の計5人で構成している。 17日の全員協議会では、堀江議員が議員報酬全額カット▽交通費のみ支給--とする案を示したが、他の4議員は2割削減案に賛成した。 堀江議員は「経営改善されたと言えない中で、2割カットでは理解を得られない。 報酬削減は今後も提案していく」と話した。

http://mainichi.jp/area/chiba/news/20090728ddlk12040156000c.html

 競馬議員と呼ばれるセンセイたちは、ほとんどの場合、競馬については全くのシロウト、ご自身馬券を楽しんだりするならまだましで、そもそも競馬はおろか競輪、競艇までこれまでどういう理由で存在してきているのか、など全くご存じない場合もある。もちろん、そういうシロウトのセンセイを好んで選ぶように仕向けることも、競馬経営の「プロ」を自認する側には多々あるわけで、当然、主催者に都合の悪いことは見ざる聞かざる言わざる、何もしないで売り上げが伸び続けていた頃ならそれでも回っていたのでしょうが、どこも赤字が累積、経営の立て直しなどが議会から、何よりタックスペイヤーたる地元の住民たちからも意識されるようになると、こんな構造のままでは何の改革もできないのは自明のこと。

 ここでも、本気で身体張って競馬を何とかしよう、という人材がいない、という、いまどきのニッポン競馬をめぐる構造的な病弊はしぶとくも変わりません。いや、もちろんそういう気持ちを持っている人もいるのは見知ってますし、彼ら彼女らの熱意を疑うのでもない。でもしかし、です。そういうやる気や情熱を実際に競馬を動かす仕組みにうまく反映させてゆく回路ができないまま、というのも、また厳然たる事実。「やる気」は散発的に何かの兆しとして見えるだけで、そこから先、大きなうねりや連携につながってゆくことは未だ遅々として進みません。こういう方面ではノウハウをたっぷり蓄積しているJRA主導でもいい、このような本当の意味での競馬運営の「プロ」、を新たに養成してゆく仕組みは作れないものでしょうか。学歴経歴は原則不問、ニッポン競馬を何とかしたい、という熱意をテコに頑張れる人を、と広く声をかけてみる。思えば、そういうマネジメントの専門家というのは、わがニッポン競馬においては、閉ざされたところでしか育ってきませんでした。本格的な改革が動き始めた今だからこそ、手当てをしておく必要があると思います。

 高知のナイター開催もいよいよ始まったようです。少し前、大学なんてところに再び首輪をつけられる前ならば、何を置いても駆けつけてその場で起こっていることを我とわが身に刻みつけようとしていたのですが、今やそれもかなわず、遠く北の地からはるかに、おめでとう、これから先が正念場だけど頑張って、とエールを送っているばかりでしたが、報道その他で見聞きする限り、ひとまず入場者も倍増、南関東で売ってもらえている分、売り上げも少しは上向いているようで、スタート当初のご祝儀相場と言え、どん底の状況であがく競馬場にとっては何よりの朗報。冬場も含めての通年ナイターが軌道に乗るよう、勢いをつけてゆければ何よりです。