メディアの失語症

なんか最近、朝鮮半島でも南の海でも結構大変なことになってやしないだろうか。

韓国の方はありゃもう戦争スレスレ。だって、いきなりよその国の潜水艦から武装した人間が二十人もその上も上陸して、こっちはこっちで正規軍が出動してドンパチやってるんだもの。それでも、報道されている限りではいきなり事態が拡大する気配は今のところ薄い。そういう意味では、アメリカの武力を中心としたこの東アジアの安全保障システムというのは今のところ実によくコントロールされているのかも知れない。もちろんこれ、皮肉も込みですよ。 でも、だとしたらなおのこと、そのシステムの要にいるはずの在日米軍が果たして今どれくらい緊張しているのか、そして事と次第によっては否応なしにそこに連動しなければならない自衛隊がどう身構えているのか、そのへんの報道すらロクにされないこの状況というのはやっぱりヘンだ。そりゃプロ野球も気になるし、国会の行方も沖縄の基地の問題も大切だと思うけど、そういう何でもありの現実のまっ只中でこういうミもフタもない事態が起こっていることの意味もきちんと考える材料をわれわれの前に示してくれる、それこそがメディアの重要な役割ざんしょ? それでなくても、ただでさえ「軍事」の領域がなかったことにされて、役立たずに夢見勝ちなだけの「平和」気分をいたずらに増幅させてきたこっぱずかしいこれまでがあるんだからさ。

尖閣諸島の問題だって同じこと。流されるニュース映像はほとんど香港や台湾発のものばかり。聞けば海上保安庁の巡視船が十何隻もすでに出動してるらしいじゃないか。こういう時こそヘリでもチャーター船でも繰り出して、一体何がどうなってるのかきっちり自前で報道せんかいって。 どうやらわがニッポンのメディアというのはいきなり失語症になるツボをいくつか持っているらしい。中国や朝鮮半島といった「アジア」の隣近所に関することはその最たるもの。こちとらに都合の悪いことはあちらで問題になって初めて国内報道されるという構造はなぜかもう当たり前。それが「軍事」がらみだとなおさらだし、「過去の戦争」関係でもご同様。見事に腰が引けちまって一人称で立場や意見を表明できなくなる。ひどいのになるとこちらから情報を流してあちらに報道してもらう手合いもいるとかいないとか。そんな卑屈な態度でいくら殊勝に「謝罪」して見せたところでそんなもの反省でも何でもない、ただ過去をなかったことにしているだけのこと。自前でつぶさに言葉にしてどのように〈いま・ここ〉で引き受けようとするかを忘れた最も無責任な対応だと、どうして誰も思わなくなっているんだろう。ほんと、これって謎なんだわ。