青島都知事バッシング

 先週は、青木大使叩きってちとヘンじゃないの、ってことを少し申し上げましたが、眼を転じれば、青島幸男東京都知事も近頃やたら叩かれております。元『話の特集』の編集長矢崎泰久サンなど、同志糾合して青島叩きのためだけに一冊本まで出される気張りよう。ただごとではない。

 確かにこの青島知事、言われるまでもなくかなりなスカだったと僕も思う。当選直後、例によって「こんなタレントが知事になるとは世も末だ」などと嘆く向きに対して「馬鹿言え、青島・ノックで何が悪い」と断固支持を表明した身としては残念無念なのだが、しかしこれは結果論。ヘタな独立国以上の予算と図体を持つ東京都の親方ともなれば、官僚制の壁ってのは心意気だけで乗り越えられるような生やさしいものでもないらしいことをこちらも学んだわけで、次の選挙できっちりお引き取り願えばいいだけのことだ。

 それに、何も都知事でなくても、まあ、そういう衆目の一致する「エラい人」になっちまえば、いくら本人にそのつもりはなくても、まわりは「なんでえ、あいつ偉そうになりやがって」とついつい思うのが人情。とは言え、だからと言ってその腹の中をおおっぴらに世間に向かってさらけ出しちまうのがいいかどうかは、また別問題だろう。

 つらつら眺むれば、矢崎サン初め、永六輔サンに大橋巨泉サンと、今、青島叩きに盛り上がる人たちの多くはかつてメディアの最前線で共に踊り、後には多少政治の方面にももの申していたような、まあ、いずれ劣らぬメディア渡世の手練れの面々。そう言えば、似たような面々の担いだ革自連なんて運動もありましたっけねえ。何にせよそこらへんに何か妙な仲間意識や同類感覚がありそうな気がする。

 それはそれだが、しかし、その分可愛さ余って何とやら、友人としてサシで意見するのならともかく、いきなり世間に向かって大声で悪口を言いつのるのは、赤の他人でない分、かえって釈然としない。ことの発端になった野坂昭如サンが青島サンを訪ねたという一件はまずきっとそういう古い友人としてのことだったろうと、これは外野ながらも推測できるけれども、そこから先、その尻馬に乗ってしゃしゃり出て「見損なったぞ、青島」と居丈高な見栄を切るなんざ、正直言ってあんまりみっともいいもんじゃない。

 だって、いかにかつては友人であり仲間であったとしても、やっぱり今や立場が違うんだもの。なのに、「どうせあいつももとは同じタレント出身だから」てな勝手な前提で文句をつけてるのだとしたら、それじゃ単なる世間の他人と同じ。何のための友人かわかりゃしない。まして、それを「有権者の一人として」なんて舞い上がったもの言い持ち出して正当化するとなると、こりゃ完璧に本末転倒。仲間なりゃこそ、まず黙って愚痴でも聞いてその上でそっと親身の意見を、なんてやり方が本当だと思うんですけど。それとも、それすら今の青島サンってもう聞く耳持たなくなっちまってるんでしょうか。