マツケンサンバ・考(コメント)

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 マツケンサンバの人気については、まあ、いろいろ言われてますが、基本的には、パラパラやランバダなど、これまで近年、いくつか流行った「踊り」系身振りと若干異なり、その人気を支えているのがどうやら中高年層、ないしはもっと敷衍すれば「オトナ」である、というあたりがひとつ特徴的だな、と感じています。

 「若者」が「流行」の牽引力になり、また主体でもある、というのは高度成長このかた、大衆消費社会のモードとして定着してましたが、ここにきて、その「若者」幻想自体を相対化するような動きが、社会の内部から出てきているようにも思えます。

 身体を動かすことに以前の日本人ほど抵抗のなくなっている、そういう意味では少し身体作法の異なる世代が、四十代から五十代にかけて、出現し始めています。「社交ダンス」ブームなどもそのさきがけだった感じがありますが、あの金ピカの衣装その他は、いまの日本人にとってすでに日本文化のパロディとしてとらえられている、というあたりが、外国人にはわかりにくい文脈かも知れません。何より、松平健、という俳優自体が、「時代劇」と不即不離で、その意味では流行から決定的に遅れている存在だったわけで、だからといって、ナショナリズムなどで補強もされようがない、そういう盲点のような存在だったことが重要でしょう。

 アメリカ人ならば、たとえばC&Wのベタベタのヒーロー像、それこそジョン・ウエインがカウボーイの衣装をまとって、フラメンコを踊ってみせているようなキッチュさ、それがマツケンサンバにはあるわけです。


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*1:例によって、どこのコメント依頼だったのか失念……おそらく新聞のような記憶があるが。