エバラとモランボン

焼肉のタレ、をわれら日本人の舌に浸透させたのは、何と言ってもエバラとモランボンだ。おおむね1970年代から一気になじみが出てきた調味料。すでに30年以上の歴史がある。

「エバラ焼肉のたれ」のエバラ食品は1958年(昭和33年)、荏原食品として創業。キンケイブランドでソースやケチャップ、ラーメンの素などを手がけた後、原型になる「焼肉のたれ・朝鮮風」を発売したのが68年(昭和43年)1月。70年(昭和45年)からテレビでCMを打ち始めたことあり、有名になっていった。

一方、モランボンはモロに在日、それももとは総連(北朝鮮)系の企業だった(いまは創業者から代替わりして離れている)。1951年(昭和26年)、レジャー産業(パチンコ屋)として創業、60年代末頃から焼肉屋が流行り始めるのを期に、72年(昭和47年)に別会社として設立。焼肉のたれを主力に売り出すようになった。ちなみにもとのレジャー産業担当の「さくらコマース」は「サクラ」の冠名で競馬ウマも所有、大きなレースを勝った日は系列のパチンコ屋や結婚式場、ボーリング場などで出血大サービス、というのは結構知られている。

甘辛く濃いあの味つけは、肉そのものの味にはいまひとつなじみにくかった日本人にとって、肉を食べることの敷居を一気に低くしてくれた。ニンニクや唐辛子、ゴマはもとより、リンゴなど果汁系も混ぜるのは、本場韓国で肉をやわらかくするためコーラに漬け込むのにも通じるアイデア

ただ、この焼肉のたれ、ひと瓶使い切ることはあまりない。だから、冷蔵庫の中でどうしても残ってしまうのだが、最近ではそれぞれ野菜いためやサラダ、冷や奴などにも流用、また一説には、あのイチローも、焼肉のたれがしみたゴハンが最高、と発言したとかしないとか。もっとも、あの味は朝鮮由来の調味料というよりも、ラーメンのように日本でアレンジされた味つけと見るのが正確だと思われるが、いずれにせよ、確実にわれら日本人の味覚を浸食していることだけは間違いない。