税金、ってなに?どうして払うの?

 税金というのは、簡単に言えば、「国」という仕組みを動かしてゆくための費用です。

 「国」という仕組みは、もともと人間が生きてゆく上で絶対に必要というわけでもありませんでした。けれども、ただ生きてゆくためだけでなく、よりよい生活をしようとすれば、血のつながった親戚や一族、あるいは隣近所の範囲で住んでいるムラといった単位だけでなく、もっと大きなまとまりをつくってたがいに手をつないでゆく方が便利だしトクだということがわかってきます。簡単に言えば、そのようにして大きなまとまりをつくっていったのが、「国」という仕組みの始まりだと思ってください。

 けれども、そのような大きなまとまりを動かしてゆくためには、費用がかかります。それをみんなでわけあって出し合おう、というのが税金の考え方です。

 とは言え、「国」が大きなまとまりになれば、それを動かしてゆくのは、みんなで手分けして、というわけにもゆきません。それぞれが仕事をしながら片手間に、では限界がある。なので、「国」の仕組みを動かしてゆく専門の役割を担う人を雇おう、ということになりました。それが「公務員」です。

 「公」に努める、つまりみんなのために役に立つ仕事を専門的にやる人、です。

 普通、仕事というのは「生産」に関わります。生産とは「つくる」ことですね。お百姓は米や野菜をつくりますし、工場で働く人は自動車や機械をつくります。けれども、公務員は何も生産しません。強いて言えば、お店に勤めている人と似ているかも知れません。お店に勤めている人も眼には見えないけれども、ものを売ることでサービスという商品をつくりだしています。それと同じように、公務員もまた、「公」=世の中に対するサービスを仕事としてつくりだしている仕事です。

 ほんとうなら、それもみんなで手分けしてやれればいいのでしょうが、でも「国」という仕組みが大きくなればなるほど、それぞれ専門的に難しい部分が出てきます。何より、「国」という大きな仕組みを動かしてゆくルール自体、「法律」というはっきりとした取り決めがありますから、それに従って動かしてゆくためには専門の知識も技術も経験も必要です。また、うまく組織を動かしてゆくためには書類が必要ですし、その書類をうまく扱うためのことばの使い方や書き方なども必要になります。そのように「公務員」としての特別の知識や技術も必要になってくる。そういう専門家を、みんなで出し合う税金の中から雇って「国」というこの便利な大きなまとまりを動かしてもらおう、ということになっています。

 けれども、税金を払うのはひとりひとりのわたしたちですから、払った税金をどのように使えばいいか、実際どのように使われているのか、についても責任があります。それらもいちいち監視するわけにいきませんから、みんなの代表を選んでその仕事をやってもらおう、ということになります。それが「議員」です。「議員」は「選挙」で選びます。その選挙に投票する権利をみんなひとりひとりが持っています。それは権利であると共に義務でもあります。なぜなら、税金を払うのも日本という国に住んでいる義務であるように、その税金の使い方を考えるための議員を選ぶ選挙に参加するのも、また義務だからです。

 それらみんなの代表が集まって話し合いをして、税金の使い方からこれから先「国」をどうしてゆくのか、みんながよりよく生きてゆくためにはどうしたらいいのか、を決めてゆくのが「議会」です。

 公務員のことを「公僕」とも呼びます。「僕」は「しもべ」です。召使い、ですね。英語ではパブリックサーヴァント、と言います。サービスする、かしづく立場がサーヴァントです。パソコンのサーバーとか言いますね、あれと同じ仲間の言葉です。

 「公」というのは、つまり世の中です。みんなひとりひとりが生きているこの世界です。それをうまく便利に動かしてゆくための「国」という大きな仕組みを運転してゆく専門家としての公務員とその組織は、みんなが生きているこの世の中のために存在しています。