自民党総裁選タウンミーティング雑感

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 自民党の総裁選挙が決着しました。地方の一般党員票も含めた1回目の投票で決着がつかず、国会議員(と地方県連)による決選投票の結果、岸田文雄政調会長が新たに自民党総裁に選出された、というのはご案内の通りです。

 総裁選が単に一政党のものだけではない、という意味なのでしょう、政策課題別にオープンタウンミーティングというのも複数回やっていて、これはZOOMを介したリモート環境でのものでしたが、事前に質問内容を示して申し込んだ人から各回100人を選出、顔と名前を明らかにしてZOOM環境にリアルタイムで接続してもらい、司会者の指名によってその事前の質問内容にそった質問をするのに対して、4人の候補者がそれぞれ答えてゆく、という形式。かくいう自分も申し込んでみたところ当選して、質問をする機会に恵まれました。

 9月23日から4日間の日程の3日目、「防災・減災、国土強靱化、観光振興、農林水産」というお題の日でした。時間は夜6時から7時半までの90分を予定。800人ほど応募があった中から選んだ100人をZOOMでつないだわけですが、司会が指名する15人ほどが質問できるという仕組み。質問が1分以内という制限でしたから、それに対して4人の候補が1分ずつ答えて都合5分で90分という計算なのでしょう。


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 「日本国籍をお持ちの方であれば、お子様も含めどなたでも応募できます」となっていたので、6歳の男の子や小学生も冒頭から質問者に指名されて、「ボクたちが大きくなったら虫を食べなくてはならないのですか」や「エビフライのシッポは食べてもいいのですか」と、まんま『夏休み子ども電話相談室』状態で始まったのには驚きましたが、その後の質問者の方々のたたずまいには、それ以上にいろいろ感じ入るところがありました。

 自民党の総裁選、事実上次期総理を選ぶに等しいということで注目されるのは当然として、新聞やテレビ以下のいわゆるマスメディアが事前にあれこれ取り沙汰し、報道してきた予想とかなり裏腹な結果が数字として現われていましたが、その候補者に自民党員ではない一般の国民の立場から尋ねてみたいこと、というたてつけで発されるその質問が、ものの見事に「どこかで聞いたようなお題と言葉のパッチワーク」になっている。いや、そもそも「質問」ではなく「自分の意見や感想の表明」であり、それに対して「あの政治家がこの自分に真摯に対応してくれている」という体験をすることだけが目的化しているようなたたずまいの人がたが、申し訳ないけれどもほとんどでした。それなりに老若男女とりまぜられてもいたし、外地におられるという方も複数いらっしゃいましたが、にも関わらずそのへんほぼ横並び。

 まあ、これが普通の選挙であってもおそらく同じこと、いや、同じ型通りの応対でもそこに地域や支援団体その他の個別具体的な利害や思惑、欲もカネもこってりからんで数十倍は難儀なのでしょうが、どの候補者もさすが代議士、そのような本邦いまどき世間のある種の「無難」で「善良」な最大公約数のあらわれを「そういうもの」として淡々とさばいておられたのには、なるほど政治家というのは大変な稼業だなぁ、といまさらながらに痛感しました。

 ちなみに、わざわざ手をあげて応募してきた人数この日800人に対して、各種動画サイトなども含めてこのタウンミーティングを視聴していた人数は数万人だった由。この「わざわざ手をあげて何かものを直接言いたい」人がたと、どんな形であれ興味関心持って観てみたいという野次馬的観客との間を、単に数字の差だけでなく、どう考えるか。本邦「公共」のいまどきを考える上で、おそらく大事なポイントのひとつではあるのでしょうな。