思想

『朝まで生テレビ』参戦顛末

*1 *2 たたずまいが雄弁に表現するなにものか、というのがある。とりわけ、それが生身の生きものだったりすればなおさらだ。 忙しげにゆきかう男たちや、ある種の緊張を漂わせながらセットの裏でくつろぐ女性キヤスター、さらに、肉食動物のように電話に飛び…

大宅文庫に集まる人々

*1● 京王線八幡山駅をおりる。新宿より各停で20分。明大前でイワシの如く乗り降りする偏差値55前後の民主主義ヅラの学生たちに混じって急行に詰め込まれ桜上水でセコく乗り換えるという手もあるが、ここに来るのは各停がいい。朝の9時少し前、ラッシュの名…

それは「八百長」ではない ――本間茂騎手「八百長」事件報道に見る「大衆競馬」の正体

● この六月二一日の朝、川崎競馬の本間茂騎手が競馬法違反の容疑で逮捕された、というニュースが朝刊の紙面に踊った。スポーツ紙はもちろんのこと、朝日、読売、毎日の日刊紙もこぞって社会面で報道した。 本間茂騎手と言えば、南関東の公営競馬でも文句なし…

ものみなすべて「ネズミ講」 にハマる――高度大衆消費社会にからみついた「群を抜く力」の不幸

*1 ● ああ、布施博だ、と思った。 厚手のつややかな紙にフルカラーで刷られた誌面に、ずらり並んだ明るくさわやかな顔、顔、顔……。撮り方にもよるのだろう。しかしそれでも、ここまで同じ明るさを等量に放射する写真を並べるためには、撮る側の意図や技術と…

みんな「ユーミン」になってしまった

*1 ―― わたしと同じフィーリングっていうか、“乗り”を持っている人が多いっていうのは、うれしい。わたしと同じような環境に育った女性に共通の感性というものがあるんでしょうね。たとえば、私立の女子高から私立大学に進んだというような……わたしはそれを“…

「まるごと」の可能性――赤松啓介と民俗学の現在

*1 *2 ―― 形而上学者にとっては、事物とその思想上の模写である概念とは、個々ばらばらな、ひとつずつ他のものと無関係に考察されるべき、固定した、硬直した、一度あたえられたらそれっきり変わらない研究対象である。形而上学者はものごとをもっぱら媒介の…

「場」の可能性について・ノート――「調査」と記述の間に横たわる病いを超えるために

*1 *2 *3 「場」とは何か。 それは、ここからここまで、というように常に均質な距離や範囲として計測器具で測定可能な具体的な領域のことではない。 また、それぞれ独立した単体の物質として分節された「もの」たちが凝集して形づくられている可視的なまとま…

「ヤツら」は街にたむろする――語られた「異質なもの」について①

*1 浅草には“血桜団”という不良が二人ずつ組んで道をあるいていて、その一人がうしろからスカートをまくれば、他の一人がハンドバックをもって疾風のように逃げ、 一人が針金で帽子をつれば、その隙にもう一人がぶつかっていって財布を抜く……それがアサクサ…

TRACY CHAPMAN『TRACY CHAPMAN』(ワーナーパイオニア 25P2-2121)

Fast Carトレイシー・チャップマンシンガーソングライター¥255provided courtesy of iTunes ニューヨーク郊外、ヤスガー農場の朝もやをついて、グレース・スリックの「おはよう、みんなッ」という元気印の声が響いてから二〇年目の夏、静かに、しかし確かな…