「現代文化論」のために

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 確かに大学へ入ったはずなのに、高校あるいはそれまでの日々と何も区切りのつかない毎日をすごしていると思います。

 人間、生きていればいろんなことに遭遇するものですが、あなたたちがいま、10代やそこらで遭遇しているのは、敢えて大げさに言えば「文明史的な過渡期ないしは転換点」の日々なのかも知れません。それくらい時代の、社会の、そして世界の動きは激しいものになってきていますし、これから先しばらくは、このような「これまでの知識や経験ではうまく理解も判断もしにくい状況」が続いてゆくはずです。誰であれ、そういう時代、そういう状況を生きてゆかねばならないめぐりあわせになっていますし、殊にまだ若い、これから自分の人生を生きるあなたたちはなおのこと。だからこそ、広い意味での勉強、自分自身が生きてゆく上で本当の意味で「役に立つ」学び方を意識的にしてゆくことが、これまで以上に切実に必要になってきていると思います。

 いい機会です。まず、いったい自分は何のために大学へ入ったのか。それもいま、進学率が50%を超えて、つまりふたりにひとりは大学へ入ってしまうこの時代になぜ?――そのことをまずもう一度、自分自身に問いかけてみてください。

 何かやりたいことがあったから? 少しはいい就職をするため? 親や先生に言われて何となく? どうしてわざわざ大学へ、それも短大や専門学校などでなく4年制の、それも人文学部なんて学部へ? 4年間で何をしたいと思っている? 4年後にどんな自分になっていたい?

 自分がこの先、生きてゆく上で「役に立つ」勉強というのはどういうものか。何か資格や免許をとるための、そういう目的が具体的に見えている勉強ではなく、自分自身が世の中を見通してゆくために、その世の中と自分との関係を含めて「わかって」ゆくことで自分の人生を自分の手で組み立ててゆくために、大学での勉強はありましたし、こんなに移り変わりの激しい世の中になっても、いやだからこそ、本当に「役に立つ」勉強の意味は重くなってきています。

 あなたたちがまず受けることになる「現代文化論」というのはそういうことから、自分と世の中、それを「わかる」ための勉強とは何か、ということから少しずつ、半径身の丈のところから考えてゆこうとする最初の講義科目になるはずです。

*1:4月入学の新入生がコロナ禍でいきなり開講延期になった、その間のつなぎというか、ニューズレター的なものとして学科の担当者から求められて書いたもの。結局、この後Zoomを介した遠隔授業になっちまったのだが。