2001-09-01から1ヶ月間の記事一覧

書評・林房雄『大東亜戦争肯定論』/火野葦平『陸軍』『革命前後』

いまさら言うまでもないことですが、世の「構造改革」の大波は、「エラい」にあぐらをかいてのほほんとしてきた活字と本の世界にも、ガンガン押し寄せてきております。 零細生産者であるこちとらもの書きや版元の事情はひとまずおいておくとしても、小売りで…

「キャラ」ということ――小池一夫・編『キャラクター原論』

キャラクターはこう創る! (小池一夫の漫画学―スーパーキャラクターを創ろう)作者:小池 一夫小池書院Amazon キャラ立ち、というもの言いがあります。 主としてマンガ業界から発したものだと思いますが、連載マンガなどで登場人物のありようがいきいきとしてき…

南方熊楠伝説

そもそも、と、たまには柄にもなく大きなことを言いますが、ガクモンガクモンと言いながら、その当のガクモンの成り立ちというやつについては、実はあまりきちんと言及されたことがない場合が多いのであります。 特に文科系のバヤイ、そもそもどういう背景、…

回転寿司、圧勝

寿司、天ぷら、刺身、というのが、ニッポン人にとって「ごちそう」の定番だった時期がありました。 あ、いわゆる「洋食」はちょっと別ね。「洋食」ってやつは「肉」の圧倒的な魅力と一緒になって、まさにハレの食いものとしての地位を戦後、獲得していった。…

書評・川村湊『妓生』 菅野聡美『消費される恋愛論』

妓生(キーセン)―「もの言う花」の文化誌作者:川村 湊作品社Amazon川村 湊『妓生――「もの言う花」の文化誌』(作品社) こういう本が日本の学者(一応)から出るようになったことは、まず喜ぼう。大方は「キーセンパーティー」でしか知らない、かの「妓生」の…

ユニクロが先行する

ユニクロの店舗は、いまどきの郊外でもある種独特な存在感を持って建っています。 まず、あの赤いロゴ。シンプルな四角の中にアルファベットで白く「UNIQLO」と抜かれたあれ。特にあの「Q」ってのが曲者ですな。どうせニッポンメイドのヘンな英語なん…

書評・柳田國男『明治大正史・世相篇』/コロナブックス編集部・編『日本を知る105章』

明治大正史 世相篇 新装版 (講談社学術文庫)作者:柳田 國男講談社Amazon明治大正史作者:柳田国男平凡社Amazon柳田国男『明治大正史・世相篇』(中公クラシックス) *1 新書市場の拡大と好調に引きずられたのか、かつての文庫のラインナップからピックアップ…

駒子賞の激闘

少し暗くなってきた空から、ぽつりぽつりと雨が落ちてきました。何やら高速道路にも似た地下の馬道、高い天井に響く声はやはり女性のものです。表彰式の行なわれるウイナーズサークルへと向かうスロープからスタンドのろくでなしたちの前に出てゆく、そのほ…

クルマを持って見えるもの

クルマを持たないことには見えてこない風景、というのがあります。 あたりまえにそこにあっても気づかないというか、気づく必要がないというか。どっちにしても、クルマに乗る人間以外には、案外と意識されないままなことには変わりない。いまどき、クルマを…

スターバックスがやってきた

*1 喫茶店、ではないのだそうです。カフェ、であります。 何が違うのかっつ~と、別にそう大した違いはない。ぶらりと入ってコーヒーその他を贖い、その対価にちょっとした時間をそこでつぶすための場所。そういう商売としては同じなのだが、しかし、わざわ…

週刊誌書評の愛情

う~ん、えらいこっちゃ。なんか知らないけどちょっとゆっくりあたりを見回してみたらあなた、今やそこら中で書評なんてのはどんどん消えてってるじゃないですか。 新聞じゃ確かにまだ書評欄がしっかりある。でも、週刊誌なんか気がついたら書評の居場所なん…

マンガ評・高橋しん『最終兵器彼女』

最終兵器彼女(1) (ビッグコミックス)作者:高橋しん小学館Amazon*1 なんでもない日常が、ある日突然、予期せぬできごとによってみるみる変貌してゆく。これは古今東西、“おはなし”の黄金律だ。 ならば、こんなのはどうだ。チビで幼くてトロい女子高校生が…