1996-01-01から1年間の記事一覧

「いじめ」を考える

またぞろ「いじめ」が問題になっている。 前々から言っているのだけれども、何でもかんでもこの「いじめ」ってもの言いでひとくくりにするのは、そろそろやめにしないか? もとは「いじめる」って動詞だったものが、「いじめ」って名詞に変形された瞬間から…

手塚治虫という神話

*1 手塚治虫というと、何か“リベラル”で“民主的”な作家の代表のように取り扱われる傾向があります。特に彼が亡くなった後、雨後の筍のように出された玉石混交の「手塚本」においてその語り口はみるみる型通りのものとして形成されてゆきました。 そのような…

『手塚治虫をもっと知りたい』

「アジア」の純真

先週文句を言った尖閣列島の問題の続き。その後、香港にある日本の通信社が抗議船に乗り込んで撮影していた映像がテレビ放映された。でかした。こういう足腰がないとニュースは面白くならねえ。 あの抗議団体ってのが実はほとんど何の準備もないままで、しか…

飯野賢治さん 前編 

実は不詳わたくし、パソコンだけでなくファミコンというやつも、これまでいじったのは後にも先にもたったの一回。もう何年も前、知り合いの家で初期のシムシティにひと晩ハマったきり。その後何の興味もございませぬ。街のゲーセンもほぼ同様。とにかくRP…

EYECOM

「外国人」の商品価値

日本人は外国人に弱い、とよく言われる。この「弱い」というのは「甘い」と同義でもある。論壇やジャーナリズムなどでも、未だに外国人であることを隠れ蓑に商売ができるらしい。 最近とみに話題になるウォルフレンなどもそうだ。日本語が読めないと言われる…

メディアの失語症

なんか最近、朝鮮半島でも南の海でも結構大変なことになってやしないだろうか。 韓国の方はありゃもう戦争スレスレ。だって、いきなりよその国の潜水艦から武装した人間が二十人もその上も上陸して、こっちはこっちで正規軍が出動してドンパチやってるんだも…

とり・みき インタヴュー

*1● ――こういうインタヴューとか対談といった仕事はこれまでもされてたんですか。とり いや、初めてですね。最初は、別にマンガ家に限らないで自分が興味を持った人のところに行って話を聞くというシリーズだったんです。編集部としてはマンガを描いて欲しか…

代議制、終焉か?

あの野村沙知代オバサンが新進党から衆院選に出馬するらしい、というとんでもない話が飛び出した。 ほんとかウソか、なにせネタ元がスポーツ紙で「政界に詳しい関係者によれば」という例によってのあやふやな話。新進党からはまだ正式に打診もしていないそう…

宮台真司の立ち往生に思う

宮台真司という社会学者がいる。東京都立大学の助教授で、いわゆるブルセラ現象など今のティーンエイジャーの生態を対象として「若者文化」を論じている。難しい専門用語を操ることばかりうまくなって社会的な発言のできなくなった昨今の社会学畑には珍しく…

「正論」的「保守」言説の限界

*1 「保守」と言われ、「右」と言われる。最近では僕などでさえ、こういう場で連載を持っているというだけでそのようにレッテルを貼られることが少なくない。まして、いわゆる「東京裁判史観」に疑問を呈し、その枠組みを相対化するようなことを言ったならば…

「コギャル」の嘘

「コギャル二人、ホストクラブ借金返済のため売春300回」というニュースがあった。場所は大阪のミナミ。いかにも「ああ、いまどきの十代の話ね」という印象を喚起するニュースではある。 下品な計算で申し訳ないが、2人で300回で600万円というと単…

鳩山新党だってばさ……

鳩山新党ってのができたそうである。愛想なしで申し訳ないが、へえ、そうなの、としか言いようがない。 理由は簡単。鳩山由紀夫のあの眼、あれがどうも信用できない。だってさあ、細川護煕と同じ眼してやがんだもの。なんだかなあ、二世議員って何かみんなあ…

「郵政大臣官房総務課課長補佐」中村伊知哉さん 後編 

「郵政大臣官房総務課課長補佐」中村伊知哉さんの後半戦であります。世間からうかがい知れない中央官庁の仕事について、話は佳境に入ります。 中村 私の机の上には、私の決裁を待ってる法律案やら稟議書やらの間にマッキントッシュとコンパックがポコンと置…

住民投票の正義

「住民投票」というもの言いを新聞や雑誌で見かけることが多くなってきた。 原発建設をめぐる新潟の巻町の一件でもそうだし、沖縄の基地代理署名訴訟がらみでも「住民投票」がささやかれ始めている。もちろん、今のところはまだごく一部の人たちの間で盛り上…

O-157=カイワレ騒動のこと

O-157をめぐる騒動でカイワレ大根がとばっちりを食っている。厚生省が「感染源がカイワレ大根である可能性は否定できない」と発表したことでものの見事に店頭から締め出され、売り上げは激減。実際にまだ感染源が特定されたわけでもないのにただ可能性…

宮本政於、という元官僚

宮本政於という人がいる。厚生省の官僚だったが、率直な官僚批判を内部から繰り返して、結局懲戒免職になった。その間の自身の体験をもとにした『お役所の掟』などの著書で知られている。これらは英訳もされ、アメリカなど海外でも評判を呼んでいると聞く。…

安室奈美恵というフォークロア

● 安室奈美恵のニューアルバム『SWEET19BLUES』のセールスは、五〇〇万枚を突破しそうな勢いという。五〇〇万枚。見当すらつかないが、ひとまず豪気な話だ。 だが、商品音楽の市場がこういうとんでもない広がりを獲得し始めたのは何も今始まった…

STUDIO VOICE

96年上半期のニュースから

なんだかんだ言って今年ももうはや八月。というわけで、今年前半のニュースランキングのトップをずっと眺めてゆくと、はあ、そういうことか、と気がつくことがある。世間の意識がどういう方向にアンテナを向けて、どういう情報にピッと反応しやすくなってる…

書評・今川勲『犬の現代史』間直之助『馬の表情』オバタカズユキ『ペットまみれの人生』

*1犬の現代史作者:今川 勲現代書館Amazon かつて、板倉至という軍人が.いた。軍用犬研究班の主任で陸軍大尉。一九三一年九月、関東軍が軍事行動に出た柳条湖事件の時、日頃から訓練していた三頭のシェパードを軍用犬として連れて前線に立った。 「『那智』『…

書籍流通の変貌

最近、取り次ぎを介して配本したはずの本が二週間足らずで戻ってくることが多い、という話をあちこちで耳にする。しかも、梱包が解かれた形跡さえない、明らかに中身を確認もしないでそのまま送り返してくるのだ、と出版社の人間たちは苦い顔で言う。 出版社…

「情報公開」という正義

どうやら世間の最近の新たな“錦の御旗”は「情報公開」のようである。 仙台高裁で食料費についての情報公開をめぐって「全面開示」の判決が出た。官官接待で接待した相手の氏名まで情報公開しろ、というお裁き。個人の氏名はプライバシーに関わるから情報公開…

「文化侵略」ということ

まず最初に、先々月のこの欄で小生の書いた「無断引用・言及」問題について、多くの読者から問い合わせをいただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。 関係者に聞くところでは、版元である吉川弘文館はもちろんのこと、当事者である編者と著者も相変…

なぜ、「家族」がそんなに気になるの?

*1● 「今、家族はどう描かれているか」というのが、ひとまず与えられたお題であります。 もちろん、ここは『海燕』というお座敷でありますからして、これには「今の日本のブンガクにおいて」という限定条件が暗黙のうちについていたりするわけです。 ただ、…

「郵政大臣官房総務課課長補佐」中村伊知哉さん 前編 

もらった名刺の肩書が「郵政大臣官房総務課課長補佐」。おお、こりゃバリバリの若手官僚であるぞ。 「官僚」というと何か無条件で悪いヤツというイメージになっちまってる昨今だが、しかしその実体はなかなか見えてこない。とりわけ、三十代以下の若い世代が…

EYECOM

岡崎京子の「受難」

「そう言えば、岡崎京子どうしちゃったんだろうね」 今どきの東京の女子高生にしてはおとなしめな制服の着こなしをしたふたりが、とある書店のマンガ売場でこんな会話を交わしていた。 九州などではどんな状況なのか知らないけれども、東京の主な大型書店で…

書評・中野 翠『会いたかった人』(徳間書店)

会いたかった人作者:中野 翠徳間書店Amazon 中野翠ってもっと若いんだと思ってた、と言う人がよくいる。ひとまずごもっともな感想ではある。 雑誌編集者的世界観からすれば「女性コラムニスト」とひとくくりにされがちなもの書きたちの中で、仕事だけで判断…