2001-01-01から1年間の記事一覧

南方熊楠伝説

そもそも、と、たまには柄にもなく大きなことを言いますが、ガクモンガクモンと言いながら、その当のガクモンの成り立ちというやつについては、実はあまりきちんと言及されたことがない場合が多いのであります。 特に文科系のバヤイ、そもそもどういう背景、…

回転寿司、圧勝

寿司、天ぷら、刺身、というのが、ニッポン人にとって「ごちそう」の定番だった時期がありました。 あ、いわゆる「洋食」はちょっと別ね。「洋食」ってやつは「肉」の圧倒的な魅力と一緒になって、まさにハレの食いものとしての地位を戦後、獲得していった。…

書評・川村湊『妓生』 菅野聡美『消費される恋愛論』

妓生(キーセン)―「もの言う花」の文化誌作者:川村 湊作品社Amazon川村 湊『妓生――「もの言う花」の文化誌』(作品社) こういう本が日本の学者(一応)から出るようになったことは、まず喜ぼう。大方は「キーセンパーティー」でしか知らない、かの「妓生」の…

ユニクロが先行する

ユニクロの店舗は、いまどきの郊外でもある種独特な存在感を持って建っています。 まず、あの赤いロゴ。シンプルな四角の中にアルファベットで白く「UNIQLO」と抜かれたあれ。特にあの「Q」ってのが曲者ですな。どうせニッポンメイドのヘンな英語なん…

書評・柳田國男『明治大正史・世相篇』/コロナブックス編集部・編『日本を知る105章』

明治大正史 世相篇 新装版 (講談社学術文庫)作者:柳田 國男講談社Amazon明治大正史作者:柳田国男平凡社Amazon柳田国男『明治大正史・世相篇』(中公クラシックス) *1 新書市場の拡大と好調に引きずられたのか、かつての文庫のラインナップからピックアップ…

駒子賞の激闘

少し暗くなってきた空から、ぽつりぽつりと雨が落ちてきました。何やら高速道路にも似た地下の馬道、高い天井に響く声はやはり女性のものです。表彰式の行なわれるウイナーズサークルへと向かうスロープからスタンドのろくでなしたちの前に出てゆく、そのほ…

クルマを持って見えるもの

クルマを持たないことには見えてこない風景、というのがあります。 あたりまえにそこにあっても気づかないというか、気づく必要がないというか。どっちにしても、クルマに乗る人間以外には、案外と意識されないままなことには変わりない。いまどき、クルマを…

スターバックスがやってきた

*1 喫茶店、ではないのだそうです。カフェ、であります。 何が違うのかっつ~と、別にそう大した違いはない。ぶらりと入ってコーヒーその他を贖い、その対価にちょっとした時間をそこでつぶすための場所。そういう商売としては同じなのだが、しかし、わざわ…

週刊誌書評の愛情

う~ん、えらいこっちゃ。なんか知らないけどちょっとゆっくりあたりを見回してみたらあなた、今やそこら中で書評なんてのはどんどん消えてってるじゃないですか。 新聞じゃ確かにまだ書評欄がしっかりある。でも、週刊誌なんか気がついたら書評の居場所なん…

マンガ評・高橋しん『最終兵器彼女』

最終兵器彼女(1) (ビッグコミックス)作者:高橋しん小学館Amazon*1 なんでもない日常が、ある日突然、予期せぬできごとによってみるみる変貌してゆく。これは古今東西、“おはなし”の黄金律だ。 ならば、こんなのはどうだ。チビで幼くてトロい女子高校生が…

いわゆる新聞表記について

通信社配信のものも含めて、たいていの新聞に原稿を書いたことがありますけど、漢字を開くかどうか、とか、送り仮名とか、そういう表記上の問題は、新聞に限らず雑誌でも、基本的にそのメディアのものさしに任せるようにしていますから、漢字表記そのものよ…

書評&追悼・『いつだって一期一会――テレビカメラマン新沼隆朗』

どういう具合に取り上げようかと、柄にもなく逡巡していた本がある。 400字書評でやるのももったいないし、何より抱き合わせで引き立つその他の本もなかなかない。特集でやらせてもらっている民俗学概論大月流の方で、とも思ったけれども、それだと本自体の…

靖国神社って、そもそも何よ?

いやあ、すげえなあ、しかし。十二万人以上だそうですよ、十二万人以上。 甲子園球場でも、満員で六万人とか七万人。東京ドームもやっぱりそれくらいのはず。もっともこちらは最近、巨人戦のテレビ中継の視聴率が十パーセントを切ったとかで、プラチナチケッ…

強いばかりが競馬じゃないと……オースミダイナー

*1 スターホース、というのもの言いがある。ハイセイコーだ、トウショウボーイだ、テンポイントだ、というクラシックなろくでなしもいれば、シービーだ、ルドルフだ、そりゃオグリンしかないわ、という向きもある。もちろん、いやナリブー、ハヤヒデ、ヒシア…

歴史教科書問題をどう考えるか

*1 どうちがうの?―新しい歴史教科書vsいままでの歴史教科書 (夏目BOOKLET) 作者:夏目書房編集部,大月 隆寛,福島 雅彦,高田 明典,高橋 順一,西岡 昌紀,橋爪 大三郎,日垣 隆,宮崎 学 メディア: 単行本 ● 歴史教科書問題、ってやつは、二十世紀最後の十年、この…

ありがとう、コンサートボーイ 

*1 *2 引退式というのをご覧になったことがあるだろうか。競走馬の引退式である。 たいていはその生涯で最高のレースをやったゆかりの競馬場で、そのレースを勝った時のゼッケンをつけて、願わくばその時背中にいた主戦騎手を乗せてゆっくりとキャンターで四…

「書評紙」というメディアの使命

書評紙というメディアがある。書評専門の週刊新聞。昔は『日本読書新聞』なんて老舗があったけれども、今は『週刊読書人』と『図書新聞』がかろうじて命脈を保っている。 とは言え、いくら本好き、活字中毒の『本の雑誌』読者でも、この書評紙を定期購読して…

ニッポンマンガとナショナリズム――『クニミツの政』『突撃!第二少年工科学校』

*1 マンガってのはすでにエイジカルチュア、つまりある世代にとっては重要なメディアだけれどもそれ以外にはどうも……てな代物になりつつある、というのがここのところのあたしの持論。いや、だからマンガはダメだ、って言ってるわけじゃなくて、メディアのラ…

「なつかしさ」のプロモーション――小泉和子『昭和のくらし博物館』青木俊也『再現昭和30年代 団地2DĶの暮らし』近藤雅樹・編『大正昭和くらしの博物誌』

「なつかしさ」ってやつは商売になる――そのことに気づいている人は、商売人も含めて別にもう珍しくもない。大衆化したおたくアイテムの重要なひとつ、高度経済成長〜昭和三十年代ネタは言うに及ばず、ひと頃盛り上がってあちこちにでっちあげられてたテーマ…

民俗学入門書指南

民俗学について何か定番の本をあげて概説みたいなの、できませんかね、と言われた。当bk1ではノンフィクションの杜の担当で、このあたしの横丁も仕切ってくれている契約編集&ライター、宮島クンからだ。 そりゃまあ、いかにあたしがドキュンでも一応は民…

コミケについて

*1 「サブカルチャー、カウンターカルチャーというが、40万人も集まる場を指してサブカルと評すこと自体が間違い。70年代の幻想を引きずっているだけ」とコミケを断じる大月隆寛氏。規模はメジャーであるのに、それを認めずサブカル的であろうとするところに…

祭りの場の不思議

www.youtube.com 10人祭、のあの感じ、ああいうのが「祭り」だ、って思うのがいまどきなんだろうね。 でなきゃ、そうだな、よさこいソーランとか、ねぷたとか、そういうの。ヤンキーの身振りとかセンスとか、そういうのがここ十年から十五年くらいの間に、も…

トーシンブリザード、JDD完全制覇

www.youtube.com*1 妙に風の強い日でした。 暑いのはこのところの猛暑で珍しくもない。ただ、この風には正直、まいりました。レースの後、あがってくる馬たちを迎える厩務員や調教師たちも、まともに眼を開けてられないくらい。いや、それどころか、飛んでく…

『フォーカス』の終焉

『フォーカス』が斃れた。 写真週刊誌の代名詞のようにまで言われ、「フォーカスされる」といったもの言いまで芸能界周辺を中心に一般に使われるようになった、言うまでもない新潮社の名物雑誌。それがとうとう「休刊」を宣言して撤退を決めた。創刊以来まる…

中沢新一『フィロソフィア・ヤポニカ』

フィロソフィア・ヤポニカ 作者: 中沢新一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2001/03 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 6回 この商品を含むブログ (18件) を見る *1 一連のオウム事件A級思想戦犯中沢新一、堂々の非転向宣言、であります。ほれ、この通…

「知られざる人生」十冊

いきなり逆説的な言い方になって申し訳ないけれども、「知られざる人生」などは、実はもうない。少なくとも、これまでのような形ではもうあり得ない。異形探し、貧乏探し、悲惨探し、逆境探し、といった陳腐化したベクトルで、それら自伝や評伝といったジャ…

「歴史教科書問題」はこう読め!

*1 ● 歴史教科書問題、ってやつは、二十世紀最後の十年、このニッポンでいちばんホットな問題のひとつだった。それはひとまず誰もが認めることだろう。 ……なあんて、もっともらしく始めちゃいましたけど、つまり世間的にもメディア的にも、これはかなりいい…

どう違うの?いままでの歴史教科書/新しい歴史教科書

歴史教科書問題、って……

すまぬ、ちみっと息切れしてた。監修(弾除け、とも言う)を引き受けていた『別冊宝島Real/腐っても「文学」?!』の最後の仕上げやら、その他、書き下ろしやらがたてこんでたもんで、ここのコラムの更新が滞っちまってたい。ひとまず、ご贔屓のみなさ…

日本という自意識

ここのところ韓国やら中国やらから、なりふり構わぬ抗議が続いていて、ただでさえ悪役になっているところへ、なおのこといらぬ注目を集めている「つくる会」教科書。まずは歴史の方がやり玉にあがりがちだけれども、公民の方も成り立ちとしては一蓮托生、こ…