1995-01-01から1年間の記事一覧

社台ファームとサンデーサイレンスは、なぜ“ひとり勝ち”できるのか

「皐月賞、どう思う?」 北海道千歳。近辺に何ヵ所も散在する社台グループの牧場群の中でも中心のひとつ、社台ファームの事務所のソファに腰かけた吉田照哉は、話が一段落した合間にこう尋ねてきた。なにげない調子だけれども、しかしそれまでの取材という約…

VIEWS

ニュースキャスターの無責任

今さらいちいちあげつらうのも大人げないが、テレビのニュースキャスター連中の無責任さに呆然とすることが、最近特に多い。自らものを言う、社会に向かって発言する、ということについての自覚がどこかでおかしくなっているとしか思えないことさえある。 去…

ウインドウズ95騒動

www.youtube.com ウインドウズ95の国内発売の一件であります。 あまりの騒ぎに、オヤジ(あるいはオバサン)が「ウインドウズって、そんなにカッコいいバンドなんかね」と尋ねた、てな笑い話もさっそく巷に出回っております。 パソコン音痴を丸出しにして…

オウム・陰謀論と「リベラル」

*1● いよいよもって大変な局面になってきましたね。○ オウム真理教の一件かい。● そうですよ。確かに状況証拠からはサリンを作ったってことだけは疑われても仕方ないし、これまで拉致監禁なんか繰り返してきてることもまずいですよ。でも、それはそれとして…

ウインドウズ95騒動 (草稿)

*1 ウインドウズ95の国内発売の一件であります。 あまりの騒ぎに、オヤジ(あるいはオバサン)が「ウインドウズって、そんなにカッコいいバンドなんかね」と尋ねた、てな笑い話もさっそく巷に出回っております。 パソコン音痴を丸出しにしてはばからず、学…

「80年代」の終焉

ああ、こりゃほんとに「八〇年代」が終わったんだな、と今、しみじみ思っている。 地下鉄サリン事件から始まった一連のオウム真理教がらみ(とされる、とひとまずまだ言ってはおこう)事件についてはすでにあれこれ山ほど言われているし、これから先も言われ…

民主的「制限選挙」のススメ

*1● 今から六年前、アントニオ猪木が初めて出馬した八九年の参院選の時に、戦後選挙史上例を見ない大量の無効票が出た、という話がまことしやかに語られたことがあります。 この、事実かどうか普通の人には容易に確認できないという意味ではまごうかたなく噂…

震災後の軽挙妄動

*1 「どうなるだろうと皆が案じている。どうにかなるだろうと何かわからないものに頼っている。国を挙げて上から下から何とかしなければならないと考えているが、どうしたらいいかということははっきりしない。「今は実行の時だ、議論をしている時じゃない」…

専門書市場の衰退

本が売れない、という話を聞く。別に珍しくもねぇや、と片づけるのは簡単だが、しかしそれでもやはり気にかかる。 もちろん、本と言ってもいろいろある。さまざまな情報誌からゲームマニュアル、サギすれすれの精神世界モノから毛つき写真集に至るまで、商品…

「正義」から「常識」を、こそ

全てがワイドショー化した、と言われるオウム真理教がらみの事件報道。鳥瞰的に見れば、テレビの特番の視聴率がうなぎ上りで、スポーツ紙と夕刊紙が飛ぶように売れ、雑誌関係は言われているほどでもなく、単行本に至っては閑古鳥の大合唱、てなところが事件…

「歴史」の蒸発

「歴史」が蒸発し始めている。 いきなりこんなことを言い出しても大方の読者にはピンとこないだろうが、しかし、曲がりなりにも「歴史」に関わる領域に足つけて仕事をせざるを得ない身にしてみれば、この危機感というか焦燥感は最近ますます切実なものになっ…

たけしは「震災後」とどう対峙するのか

「震災後」という前提に立ってものを言ったり考えたりする風潮が強まっている。冷静な思考と判断とを一気に放り出して楽になるための免罪符という意味では、かつての「非常時」「新秩序」などのもの言いと選ぶところはない。何かそのようなもの言いによって…

宗教学者たちの醜態

東京の地下鉄“サリン”殺傷事件から、オウム真理教強制捜査へ至るまでの展開は、さまざまな方面に衝撃を与えています。“サリン”そのものがこの原稿を書いている段階ではまだ発見されていず、また、上九一色村の教団施設にいたとされる信者のかなりの部分がす…

無法松との道行き

『無法松の一生』という物語がある。 ある年輩以上の方ならばすぐ思い出していただけるだろう。戦争も末期の昭和十八年、伊丹万作脚本、稲垣浩監督、阪東妻三郎主演で映画化され、国民的な人気を獲得したと言われている。 ただし、もとは小説でそれも百枚ち…

田中康夫、震災に軽挙妄動

田中康夫が震災被災地でボランティアに奔走しているという。笑止千万である。 かつて湾岸戦争の時、「文学者」という大時代な主体性で戦争反対を“宣言”する記者会見をやり、おおかたの失笑を買った一人だったのを小子は忘れていない。あの時は今は亡き中上健…

地下鉄サリン事件報道の構造

*1 東京の地下鉄“サリン”殺傷事件をめぐる報道の様相は、今のところまだ事態の大きさに素朴に驚いているといった印象で、何か確固とした方向づけがされているようには見えません。ただ、管見の限り、一般紙はもとより夕刊紙からスポーツ紙に至るまで、見出し…

誰もが和服を着ていた頃

カラオケ上手でラップが好きという若い関取の話を、どこかで読んだ。 スチャダラパーの「今夜はブギーバック」が十八番で、それも実にノリがいいのだという。それでも、彼は「お相撲さん」という世間の視線が要求する身振りに忠実に、求められればジョッキで…

アラブ競馬が消えてゆく

アラブ競馬が姿を消してゆく。 昨年、JRA(日本中央競馬会)が番組からアラブの競走を廃止すると発表したのに続き、ついに地方競馬でも東京の大井競馬がアラブの番組をなくしてゆくことを決定したという。全日本アラブ大賞典などの伝統のアラブ重賞も、近…

『マルコポーロ』廃刊について

『マルコポーロ』廃刊の一件である。 記者会見で文春が社長の田中健五名義でリリースした手紙を読んだ。ひどいものだ。いわゆる差別問題がらみの「糾弾」に対するルーティンの「謝罪」文書とどれだけ違うのだろう。いかに今回の問題がお粗末でも、こういう膝…

岩田準一。志摩の入江に宿った 一途で美少年好みの小さな学問。

テーマは一貫して男色。昨今取りざたされることの多い、かの南方熊楠との間にも、たっぷりと往復書簡が残っている。 男色とひとくくりに言うものの、今はよくわからないものになっていて、ゲイだの何だのといきなりの横文字に突然この世に舞いおりたようにさ…

どうして「現場」へ行きたがる?――キャスターたちの「現場」

阪神大震災の報道を見ていて思ったことはいくつかあるが、まず不思議だったのは、どうしてニュースキャスターたちが先を争って現地へ行かねばならないのだろう、ということだった。いきなり「温泉場のようです」と馬鹿な第一声をやった筑紫哲也を初めとして…

芸者と花柳界にとっての「戦後」

戦後五十年、というかけ声があちこちで聞かれる。 この五十年という時間に今さら何か意味があるとすれば、ただひとつ、それが生きた人間の記憶の巡り合せとしてほぼひと区切りである、ということだろう。二十歳の人が七十歳に、三十歳は八十歳に、ということ…

『マルコポーロ』廃刊の顛末

なんか、またいや〜な雰囲気になってきたなぁ。 『マルコポーロ』二月号に掲載された「『ガス室』はソ連の捏造だった」という記事をめぐってのすったもんだは、こりゃ結構長期戦になるかも、という大方の予想を裏切って、あっという間の編集長解任、雑誌廃刊…

図書新聞

おねえちゃん、のこと

*1 ある駄犬の話をする。 千葉の小林というところに牧場がある。印旛沼のさらに奥、利根川との間に広がる小高い北総台地の一部、成田線の駅が近いと言えば近いけれども、つまりは陸の孤島状態、夏は都内などよりいくらかしのぎやすいが、その分冬には霜がび…

『全共闘白書・資料編』への疑念

いろいろと物議も醸した『全共闘白書』(新潮社)の、そのもとになったアンケートの全てをまとめたものが出た。『全共闘白書・資料編』と銘打ってあるが、版元は今度は新潮社でなく、「プロジェクト猪」名義での自費出版という形になっている。母数五千人弱…

森 銑三

*1 書いたものを読んでいるだけで、どことなく読み手の気持ちを萎縮させる、そんなタチの書き手がいる。 ものが面白くないのではない。むしろ逆だ。面白い、興奮する、読んでゆくうち中身にぐいぐいと引き込まれもする。だが、どこかでそれらの文字をつむぎ…

「文学」の歴史性、その鈍感も含めて

同年代の、というと、具体的には三十代後半から、下はせいぜい二十代半ばあたりまでになるのだが、およそそのような年格好のもの書きや編集者たちと顔を合わせる機会があると、どうしてこれまで「文学」というのはあそこまで特権的な存在でいられたのか、と…

正岡容。早熟の騏驪児の晩年。寄席と芸人の世間に行き暮れる。

あだ名は「ライオン」。といっても、別にアル・パチーノじゃない。*1 いや、あの『スケアクロウ』のアル・パチーノも、むくつけきメリケン男の地金に塀の中でしんにゅうがかかったジーン・ハックマンを相棒にした珍道中。ライオネルなんて女みてえな名前だ、…