原稿

【書評】北条かや『キャバ嬢の社会学』 (星海社新書)

*1 キャバ嬢の社会学 (星海社新書)作者:北条 かや発売日: 2014/02/26メディア: 新書 「新書」というパッケージが書店の書棚の多くを占めるようになったのは、ここ10年くらいのことでしょうか。それまでの「文庫」と同等、いや、どうかするとそれ以上に大きな…

「ブラック企業」と「宗教」

最近、こんなことがありました。 ゼミの学生、いまどきのこととてデキはよろしくないけれども、まあ真面目で、ちと堅すぎるくらいもの堅い性格の男の子、仲間とのつきあいすらぎくしゃくするようなところのままある、まあ、いわゆる「コミュ障」と昨今言われ…

「逃散」が始まっている

● 名前を言えば大方が聞いたことくらいはあるはずの、牛丼の大手チェーンのひとつ。そこに属する店がこのところ、あちこち閉店しているというのでweb上から噂になりました。聞けば、店員たちが軒並み辞めて人手が足りずまわらなくなっているのだという。 例…

生活・暮し・日常――開かれた民俗学へ向けての理論的考察③

知識人や《文化》人は(どういう理由からか)日常生活は低俗なものしか提供できないと頭から固く信じている。このような確信は、あらゆる非形而上学的生活を陳腐なもの、公認されないものとして投げ捨ててしまういわゆる《実存》哲学においては、重要な役割を…

「鎖国」ノススメ

● 「鎖国」というと、いまどき何を、という顔をされます。怪訝な顔ならまだしも、時には時代錯誤のヘンな人間と決めつけられることも。 なるほど、多くの人がたが学校で、歴史の授業を介して習ってきた「鎖国」というもの言いには、江戸時代の閉鎖性、広い世界に…

天聴に達せられあり

園遊会で天皇陛下に「直訴」した、山本太郎議員の行動が結構な論議を呼びました 反原発運動に奔走する界隈に祭り上げられ、うっかり衆院議員にまでなってしまった、いわば神輿なのはいまさら言うまでもないですが、それにしてもその唐突な行動にはあたしも少々…

反中韓なココロ――見えない水準の「政治」として

ああ、世の中ってこういう具合に変わってゆくのかなあ、と思ったりしています。中国や韓国、大手メディアじゃ「お隣さん」的に取り扱われる国々に対する認識や感覚が、ほんとにこちらが思ってる以上に大きく、それも底の方からゆっくりと地滑りを起こし始め…

マンガが「読めない」若い衆から

マンガを読めない学生若い衆が増えている。そう言うと、ぽかん、とした顔をされます。嘘でしょ、冗談ですよね、といった大真面目な問いかけと共に。 そんな顔を目の当たりにするたびに、こちらはこちらで、ああ、やっぱりそういうことなんだ、と同じように呆…

「夏」「いなか」、そして「敗戦」

● 「夏」のありようが変わっています。「夏」というもの言いで示される、想定される中身がかつてと変わってきている、そういう意味において、です。 「夏」と口にし、眼に入った瞬間に反射的に立ち上がるイメージみたいなもの自体が、すでにあらかじめ設定さ…

いなか、という問い

● 「いなか」のありようが変わっています。「いなか」というもの言いで示される、想定される中身がかつてと変わってきている、そういう意味において、です。 そんなもの当たり前じゃないか、と観単に言うなかれ。「いなか」と口にし、眼に入った瞬間に反射的…

ある競馬ウマのこと

● ある名もない競走馬の話、である。 ソリダリティ(アア)牝 12歳 鹿毛 2002年4月12日生まれ。 父 レオグリングリン、母 オリビアン、母の父 ファストセンプウ。 戦績125戦30勝。2着24回3着14回4着7回5着8回着外42回。連対率43.2%。 所属競馬場……福山…

「政治」の変貌、をめぐる隠れた難儀

● 思ってることとやってることがズレちまってる人。というのがいます。 人というより、誰しもそういう状況、そういう場合ってのはあると言えばあるわけですが、それが習い性みたいになっちまってるというのは、また別のモンダイではあります。何がって、まあ…

マチとイナカ、の現在

● マチとイナカ、といったことを、いまさらながらに少し考えています。 古くて新しい問い、ではありますし、またその分陳腐で月並みにしか響かないものでもありますが、でもだからこそ、今のこの21世紀のニッポンにとって大事な問いのはず、という確信もそれ…

「ネトウヨ」雑考

「ネトウヨ」というもの言いがあります。「ネットに棲息する右翼(的思想を持っている者)」とでもいうような意味らしい。昨今、雑誌その他の表のメディアでもちらほら使われ始めているようですから、眼にされた向きも少なくないかも。いや、それどころかそも…

「ふわふわ」のリアル

しばらく海外で働いていた知り合いが、何年かぶりに帰国しました。 大学関係者というわけでもない、まずはカタギの会社員。それも一部上場の名のある大企業などでなく中小の、自ら一本どっこで渡ってゆくような働きを求められる環境で長らく世渡りしている男…

「オトナ」の消失

若い衆が酒を呑まなくなった、と言われます。同じように、タバコを吸わなくなった、とも。 統計類をざっと眺めてみても、タバコは確かに喫煙者人口自体激減していて、特に若い世代にそれが顕著なのですが、酒はとなると、実は全体の消費量がそれほど減ってい…

政と桃ちゃん、寺山修司のつむいだ「競馬」

スシ屋の政、と、トルコの桃ちゃん。この名前にさて、そこのあなた、聞き覚えがあるだろうか。耳にした瞬間、ああ、と思わず口もとがかるくほころんじまうような感覚が、まだ身の裡に残っているだろうか。 別に映画やドラマってわけじゃない。だからどこかの…

お稽古ごと、の豊かさ

● お稽古ごと、というのがあります。 昨今のこと、子どもたちに限ってみても、昔ながらの習字やそろばん、学校の勉強を助ける意味でのいわゆる学習塾や英会話教室の類いのみならず、ピアノにバレー、サッカーに野球に水泳や柔道や空手といったスポーツ系の身…

「体罰」の背景

「体罰」というもの言いが、ひとり歩きをし始めました。 大阪は桜宮高校の体育科の生徒が自殺した事件から端を発して、例によって全国の学校でのスポーツ関連の部活動に関わる同様の事例がほじくり返されメディアの舞台に環流、そうこうするうち今度はオリン…

鳴り響き始めた“戦後の終焉”の号砲

「戦後レジームの脱却」、ということが言われています。言わずもがな、安倍内閣が掲げる金看板。先の第1次内閣のころほど表立って言わなくなっているように見えるのは戦術でしょうが、それでも、いまだ安倍さん自身の政治家としての課題として、おそらく最重…

ホッカイドウ的温泉、または風呂の「豊かさ」

● 大学で簡単な「しらべもの」をよくさせています。先日も、銭湯について、なんてお題をちょっと出したら、学生たちが眼についたweb情報中心に手早くまとめて持ってきたので、それを素材にやりとりをしていると、なにげにこんな質問が。 「銭湯って昔のお風…

「道民カレッジ」編集後記

http://www.hbc.co.jp/tv/d-college/04_note.html 「ホッカイドウ学」なんて耳慣れないもの言いを掲げたもので、他の講座とはちょっと色あいの違う回になってしまったかも知れません。そのへんまずご容赦ください。 大学での「研究」や「学問」がそれぞれ高…

ホッカイドウ的「ゆるさ」の空気感

● 勤め先の大学は、札幌ドームの近く。なので、地下鉄東豊線福住駅からの人通りを横目に眺めて、あ、今日はドームで何かあるんだな、と察する次第。その混雑で駅から大学までのバスも多少遅れたりするわけで、学生たちもまたそういう「読み」を普通にしてい…

書評・横田増生『評伝ナンシー関』(別バージョン@改稿後)

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」 (朝日文庫) 作者:横田増生 発売日: 2014/06/06 メディア: 文庫 *1 いきなり、「あ、仲良しっすか」と言われた。仲間と共に打ち合わせに赴いた、その時だった。初対面だったかどうか、定かでない。ただ、その「仲良…

雁屋哲、「海外在住」のもの言い稼業

● 暖簾に腕押し、糠に釘、どう言葉を尽くしたところでまず絶対に蛙のツラに小便。そんな物件相手に四つに組むことほど、心萎えるものはありません。お題に頂戴した雁屋哲などまさにその代表。これまでも各方面からさんざっぱら槍玉にあげられてはきてますが…

マンガと北海道

● 北海道とマンガ、の関係について考えてみました。これもまた「ホッカイドウ学」の一環です。 去る3月始め、『ホッカイドウ学的マンガ学夜話』と銘打って、札幌市内でトークセッションを行いました。登場してもらったのはNHKの隠れた名物番組『BSマンガ夜…

忘れられたもうひとつの馬、そして競馬――坑内馬、アラブ競馬、他

● 坑道を石炭はこびつつおもよせて いななき交わすよごれ馬はも 死にてより時はすぐれど馬小屋に なほ棄てられしよごれ馬はも 死馬のあたまおしさげ小台車に 馬蹄ははこぶつば吐きつつ *1 明治末から大正初期にかけて、雑誌『アララギ』に投稿された山口好と…

マンガと大衆文学・再考――吉田聡『江戸川キング』をめぐって

「大衆文学はある日、忽然として誕生したわけではない。それに先行するいくつかの先駆的形態をふまえている。とくに大衆時代ものは講談・人情噺・歌舞伎・祭文・あるいは近世庶民文芸などに材をあおぎ、近くは渋柿園や碧瑠璃園の歴史もの、浪六の撥鬢小説な…

北海道における鳥獣店の歴史について・ノート

1. いま「鳥獣店」に着目する理由 ここで言う「鳥獣店」とは、かつては「小鳥屋」などと呼ばれていた、市井の「生きもの商売」のひとつである。文字通り「小鳥」を中心として、それを「趣味」として私的に飼うことを目的とした一般顧客に売買することを主に…

デザインという記憶装置の不思議――「牧場」「草原」を刷り込まれたホッカイドウ

●「北海道」がつまった空港のフロア 昨年の夏、新千歳空港がリニューアル。国際線とのコンコースが完成して、それに伴いいろいろ新しいショップなども並ぶようになりました。いまどきのこととて、小ぎれいなディスプレイにさまざまな商品がうまく並べられて…