雑感

ニッポン名物、閣僚の「失言」

えー、毎度おなじみポンニチ名物、閣僚の「失言」であります。 あんまり続くんで「またかよ」にしかならないんだけど、しかし、この「またかよ」自体問題でさ。うんざりする分、なぜ「また」なのか、ということを考える契機から根こそぎ奪われちまって、「結…

野口武徳『沖縄池間島民俗誌』のこと

沖縄池間島民俗誌 (1972年)Amazon 恩師とその本について述べます。 名前は野口武徳。今から一〇年前、僕が大学院最後の年に亡くなりました。享年五二歳。舌癌で下顎切除までした壮絶な死でした。 その野口先生がまだ院生の頃に行なった民俗調査をもとにまと…

震災後の軽挙妄動

*1 「どうなるだろうと皆が案じている。どうにかなるだろうと何かわからないものに頼っている。国を挙げて上から下から何とかしなければならないと考えているが、どうしたらいいかということははっきりしない。「今は実行の時だ、議論をしている時じゃない」…

どうして「現場」へ行きたがる?――キャスターたちの「現場」

阪神大震災の報道を見ていて思ったことはいくつかあるが、まず不思議だったのは、どうしてニュースキャスターたちが先を争って現地へ行かねばならないのだろう、ということだった。いきなり「温泉場のようです」と馬鹿な第一声をやった筑紫哲也を初めとして…

おねえちゃん、のこと

*1 ある駄犬の話をする。 千葉の小林というところに牧場がある。印旛沼のさらに奥、利根川との間に広がる小高い北総台地の一部、成田線の駅が近いと言えば近いけれども、つまりは陸の孤島状態、夏は都内などよりいくらかしのぎやすいが、その分冬には霜がび…

大学「改革」待ったなし?

大学の「改革」が、いよいよどこも“待ったなし”になってきている。 ところが、いろんな大学の事情を耳にすればするほど、何をどのように「改革」してゆくのか、「改革」の方向性がどのように意思決定されてゆき、どのように実行に移されてゆくのか、その間の…

「夏」の風景、「海」と「青春」

「ああ、海に行きてぇなぁ」 誰かがそうつぶやいた。赤坂は寿司詰めの六畳ひと間、何人もの若い衆が男女混成、仕事もないまま真夏の暑さの下、あぶられるような日々を下宿に送っていた。石井獏、内山惣十郎、小松三樹三、岩間百合子、沢モリノといった面々。…

『別冊宝島』創刊200号

宝島社の看板雑誌『別冊宝島』が創刊二〇〇号を迎えました。 それを記念して、これまでのベスト・セレクションが出ています。題して『我らの時代』。表紙の惹句によれば、「二〇〇冊一二万枚の原稿の中から選ばれた、時代を浮き彫りにする傑作ノンフィクショ…

「大学」という場所のいまどき(往復書簡)⑥

拝復 いわゆる偏差値世代が知らず知らずのうちに抱え込んでしまった「優秀さ」について、世間はまだ充分に自覚していないように、小生には思えます。 偏差値教育の弊害についての議論はすでに百花繚乱、当の文部省ですら報告書などの中では「改善」しなけれ…

「大学」という場所のいまどき(往復書簡)⑤

拝復 誠実な答えをありがとう。一読させてもらってこういうことを考えました。 以前、小生が事例としてあげた『無法松の一生』の敏雄の“その後”には、こんなエピソードが連なっています。 『無法松の一生』では、引っ込み思案の敏雄が松五郎とのつきあいの中…

ホンカツから転載依頼(笑)

「「拝啓、時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。さて、現在刊行準備中の本多勝一『貧困なる精神Y集』(毎日新聞社、94年4月刊行予定)に、先のあなた様との対談、あるいは座談会を収録させていただきたく、なにとぞ宜しくお願い申し上げます。…

「大学」という場所のいまどき (往復書簡)④

拝復 同じ駄菓子屋の店先での経験、興味深く読みました。 一次的に立ち上がる欲望としての「欲しい」よりも先に、自分がどんな品物を選択するのか、そしてその選択した自分がどのように見られるのか、といったところに焦点が合ってしまう自意識のありようを…

「大学」という場所のいまどき(往復書簡) ③

拝復 お元気そうで何よりです。 いわゆる「おたく」の属性として語られる自閉の問題ですが、自閉それ自体はプラスともマイナスとも言えない、その「自閉」という「手段」=「道具」をフルに活用して達成するべき「目的」が見えない事態こそが問題なのだ、と…

ホンカツとケンカしました

世の中いろんな人がいる。 あたりまえのことではある。あるが、しかし本当にその「いろんな」の内実をあからさまに眼の前にすることというのは、日々の流れの中ではそうそうなかったりもする。 でもさ、本当にいろんな人って、いるよ。どうしてまぁこんな風…

本多勝一に宣戦布告

世が世なら「人民の敵」になるんだろうな、こりゃ。 『毎日新聞』夕刊掲載記事にまつわる本多勝一氏との一件である。一体何が起こったのか、って? 未だご存知ない向きには、経緯のごく概略だけは今のところ『週刊朝日』10月15日号と『週刊宝石』10月21日号…

テレビの現場

この春から週一回、テレビの現場につきあうことになっている。『図書新聞』紙上では以前酷評されたNHKの「ナイトジャーナル」である。申し訳ない。 半年近くやってみて改めて感じるのは、なんだかんだ言ってもやっぱり自分は“文字の人”でしかないんだな、…

「大学」という場所のいまどき (往復書簡)②

拝復 昨年秋以来、ちょっと油断して不摂生したり、あるいはおのれで気づかぬながら些細な心労ため込んでゆくがごとき日々続けばたちどころに下血する潰瘍性大腸炎の身の上、つくづくボケるまで生きる自信はなく、いや自分に限らずわが世代のかなりの部分は予…

大学という場所のいまどき (往復書簡)①

*1 *2前略 ごぶさたしています。お元気でしょうか。 風の噂に聞くところでは、早稲田の雄弁会の学生たちにかつぎ出され、大隈講堂で高野孟や何とかいう社会党はシリウスの代議士などを集めたシンポジウムの司会をやり、その場の学生たちをバッサバッサとなで…

「売文」の倫理、「投書」の不気味

*1 ● ものを書いて、それを売ることでおカネを頂戴する。売文業という言い方は今では流行らなくなったけれども、しかしあれほど読んで字の如し、あっけらかんとわかりやすいもの言いというのもちょっとない。文章を売るなりわい。なるほどその通り。書いてな…

社会のことを考えるな

ごくたまにだけれども、学生主催の講演会で話をしてくれと言われる。 とは言え、人を呼んで話を聞くという作法自体がすたれてきているご時世。主催者側には何の目算もない場合が多く、そうするものだ、という程度のこと。ひどい時には「いまどきの大学生にひ…

馬主のパンク

● 『厩舎物語』を出した頃、よく尋ねられたのは、厩舎の人の馬券って当たるんじゃないですか、という質問だった。 毎日馬に触っているのだから調子もわかるだろうし、それに何より玄人だ。きっと馬券の方だって、と考えるのは別に不自然ではない。 だが、厩…

だまされた、と言う前に

*1 *2 同世代、というとせいぜい三十代半ばから下、二十代のケツあたりまでということになるのだが、そういう彼ら彼女らの中で、雑誌や出版、放送に広告、いわゆるメディアの周辺の仕事に携わってきた連中が、「結局、だまされてたんだよなぁ」と弱々しく苦…

趣味は社会主義――『朝日ジャーナル』という「趣味」の雑誌

*1 今も『朝日ジャーナル』を読んでいる人たち、というのがいる。 いや、天下の朝日新聞の、それも売りものとして世間に流通している雑誌なのだから落ちぶれたりとは言え何万人かの読者はいるのはあたりまえ(かな?)なわけだし、第一そういう人たちがいら…

死んでこい、という非情

*1 今年の正月のことだ。家の者も出かけてしまい、これ幸いとひとり寝正月を決め込んでいた昼下がり、突然、玄関のチャイムが鳴った。寝巻姿で出てみると、きちんとダブルのスーツを着込んだいい若い衆が、ちょっと照れ臭そうな笑顔で、頭をかきかき立ってい…

そういう人、のこと――ある「良心的」雑誌の仕打ち

*1 もう数年前のことになる。ある雑誌に、“こわい話”というテーマで何か書いて欲しい、と言われた。 大きな出版社の雑誌ではない。時代が時代だった頃にはそれなりに輝かしい時期もあったらしく、ある世代以上の、本を切実なものとして読む程度の人たちには…

拝啓、井上緑様――東大「中沢新一騒動」と、ある女子高校生のこと

*1 *2 *3拝啓、井上緑様。 あなたは今、どこで、どのように、この一九九二年の春を迎えているのでしょうか。 今からちょうど四年前、一九八八年四月一三日付『朝日新聞』の投書欄に、「栃木県在住」の「公立女子高校生」だったあなたの手紙が載りました。ご…

野毛の場外

*1● 桜木町の駅は無礼である。「国鉄」という力も歴史もきちんと宿した硬質の名詞にとって代わった“JR”というあのだらしなく媚びたもの言いにふさわしい程度に、なるほど正面から無礼千万である。 “みなとみらい”だか何だか知らないが、だだっ広いだけの敷…

『朝まで生テレビ』参戦顛末

*1 *2 たたずまいが雄弁に表現するなにものか、というのがある。とりわけ、それが生身の生きものだったりすればなおさらだ。 忙しげにゆきかう男たちや、ある種の緊張を漂わせながらセットの裏でくつろぐ女性キヤスター、さらに、肉食動物のように電話に飛び…

みんな「ユーミン」になってしまった

*1 ―― わたしと同じフィーリングっていうか、“乗り”を持っている人が多いっていうのは、うれしい。わたしと同じような環境に育った女性に共通の感性というものがあるんでしょうね。たとえば、私立の女子高から私立大学に進んだというような……わたしはそれを“…